弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年8月26日

大泥棒

社会

著者  清永 賢二    、 出版  東洋経済新報社 

 窃盗犯で捕まった人物が刑務所のなかで6年間に書きためた膨大な日記を解読し、ドロボーの心理と技術を分析・公表している珍しい本です。春日井市の住宅街で、このドロボー氏に実験してもらった結果が紹介されています。きわめて有能なドロボーだったことが立証されました。防犯ブザーなんか、てんで役に立たなかったのです。
 ドロボーの狙うのは、お金持ちかどうかではない。銀行に大金が預けてあるのではダメで、現金を家においているような家が狙い目。周囲から取り残されたような家は、家を建て替えようとし、そのためにお金を貯めている。すると、ここはドロボーの狙うターゲットになりえない。ええっ、そうなんですか・・・・。
 外からのぞいて、干し物と風呂。これがどう使われているかで、その家の人間関係がほとんど分かる。プロのドロボーは、きわめて自己抑制的(世俗的禁欲主義)であると同時に、一瞬のうちにがらりと豹変し、狂気に支えられた衝動的行動に走るという分裂的傾向にある。
 プロのドロボーは普段から人目につかないことを基本的な生活態度とし、何事につけ過度に抑制的であることをモットーとして生活している。しかし、その抑えた分だけ、自分の日常生活圏とは異なる「我を忘れても安全な別の世界」を得ようとする。たとえば、それは競馬であったり、パチンコであったりする。
 そして、非常に執念深く、非常に妄想的である。勝手な思い込みで自分に都合のよい物語をつむぎ出していく才に長けている。ふむふむ、なるほど、なるほどと思いました。
 5歳までに親がきちんと子どもに向きあって、ときには温かく、時には世の中の常識を厳しく体得させることが大切。つまり、男親が男の子の子育てに関わっているか否かである。ダメな父親よりも、真剣に生きる母親は父親以上の意味をもつ。
家庭で子どもをワルにするための原理が紹介されています。ほとんど同感・共感できる内容です。
 〇子どもがどんなに立派にしても、「それで何なんだ・・・・」とけなす。
 〇小さな子どもを抱きしめてあげる必要はない。
 〇何かを立派にやりとげても、「それで何なのだ」とケナせ。それが親だ。
 〇鉄拳こそが子ども教育の基本だ。遠慮なく見境なく殴れ。それが親だ。
 〇子どもが警察に補導されても、いじめにあっても一切かまうな。
 とんでもないことのオンパレードです。
ドロボー御殿なるものが現存するそうです。写真をみると、窓がほとんどなく、侵入する手がかりを与えない異様な建物です。たしかに、これだったら忍び込めないと思いました。反面教師として役に立つ本です。
(2011年6月刊。2400円+税)

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