弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年12月 4日

反貧困、韓国の現場から

朝鮮(韓国)

 東海生活保護利用支援ネットワーク 自費 出版 
 
 韓国に日本のサラ金が進出して、被害を及ぼしているそうです。韓国は日本より金利規制がゆるく、しかも破産すると公務員は失職したり、しかも、まだまだかつての日本と同じように多重債務者となった被害者への風当たりは強いようです。
 この小冊子は、韓国のホームレス支援、生活保護支援の状況を東海地方の弁護士や学者そしてケースワーカーなどの有志が訪問視察したときの報告書です。
 韓国の貧困層は、2007年に320万人、全国の6.7%であり、絶対的貧困層が1%ほどいる。相対的貧困率は13%であり、OECD加盟国の中では、日本が4位(15.7%)で、韓国は6位となっている。高齢者世帯の貧困率も日本と同じように増えている。ただ、女性の貧困率はいくらか減っている。
 韓国の中産層は、1996年に568.6%だったのが、2006年には54.7%へ減少している。これも日本と同じで、格差が拡大している。
 継続的貧困層のなかでは、65歳以上の人が48.4%、女性が34.1%を占めている。
 視察団はソウル市内の6階建ての古びたチョクパン(ドヤ)を見学した。なかは薄暗く、廊下も狭い。家賃は月1万5千円。階段の踊り場に洗濯物が干されている。共同トイレは水洗ではなく、清潔とは言いがたい。風呂はなく、4000ウォンの銭湯に行く。部屋は3畳ほどで、最小限の家財道具を置くと、寝れるだけの広さしかない。
公的機関のチョクパン相談所があるが、洗濯機無料利用、シャワー利用、盆と正月に寄付されたものを配布する程度であり、相談機能は果たしていない。
 韓国の失業者も増加し、2010年1月に失業者121万人。これは昨年に比べて36万人も増えている。国民基礎生活保障法による給付を全国民の3%、150万世帯が受けている。
いま、韓国のホームレスの人は全額無料で医療を受けられる。全国に35ヶ所のシェルターと5つの保護センターがある。地方には30ヶ所のホームレス施設がある。当初の150ヶ所から70ヶ所に下減っている。しかし、ホームレスが半減したわけではない。ソウル市内はホームレスが3000人いると発表している。うち2000人がシェルターに、500人が保護センター、そして残る500人がチョクパン(ドヤ)にいるという。
しかし、民間団体によると、ホームレスは全国に2万人とも10万人とも推測している。
韓国がこの分野でも日本と同じような問題を抱えていること、行政がそれなりの手を打っていることなどを少し知ることが出来ました。 
(2010年8月刊。500円+税)

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