弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年9月29日

日本の教育格差

社会

 著者 橘木 俊詔、 岩波新書 出版 
 
 日本では高卒と大卒との間で、賃金格差が目立っている。しかし、日本は、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスそして韓国と比較すると、学歴間の賃金格差がもっとも小さい。日本が1.60であるのに対して、アメリカは2.78、イギリス2.60、韓国2.33、フランス1.92、ドイツ1.85なのである。このように、国際比較では、日本は学歴による格差が小さく、むしろ平等度の高い国家といえる。
 へへーん、そうなんですか・・・・。ちょっと信じられませんでしたね。
上場企業の役員のうち、名門大学出身は50%弱であり、非名門大学出身者が過半数いる。上場企業の役員になる道は、非名門大学出身者にも、それなりに開かれている。たしかに、企業では、実力本位のはずです・・・・。
 短大・大学進学率は、1960年から1975年までの15年間に、10%から40%まで急激に上昇した。そして、1975年ころに上昇率が止まる。ところが、1995年あたりから再び大学進学率は上昇し、現在は50%を少しこえた水準で落ち着いている。これは主として女子の短大・大学進学率の上昇が要因である。
 18歳人口の半数以上が短大・大学に進学している国は、アメリカと日本くらいで、世界中にそんなに多くない。
国立大学の授業料は年に56万円。私立大学では、文系で70万円、医・歯で300万円ほど。そのため、親の経済状況が子どもの大学進学の決定に大きな影響を与えており、国公立と私立のどちらかに進学するかにも影響を及ぼしている。私のときは、年に1万
2000円の学費でした。寮費も同じです。
 公立学校で子どもが学ぶことは悪いことではないというのが著者の考えです。人間社会の縮図を子どものころから体験することは、子どもの人間形成にとって貴重な体験となるからである。私自身は市立の小・中学校そして県立高校、国立大学というコースをたどっています。中学校は団塊世代でしたから、1学年13クラス、1クラス50人。傷害事件を起こして少年院へ送られた同級生が何人もいました。ツッパリグループは隣の中学校の生徒とのケンカが絶えませんでしたが、生徒数が多いこともあって、私自身は、いつものほほんと学校で生活していました。いじめもあっていたのでしょうが、一クラスに50人以上もいると、あまり気にせずに生きていけたのです。同質の生徒ばかりが集まるのは、勉強と成績維持のためにはいいかもしれませんが、人間の幅を狭くするのではないかという心配もあると思います。いかがでしょうか・・・・。
 日本は公教育費支出がOECD諸国のなかで最低。それは、日本では教育は私的財とみなす考え方が支配的だから。つまり、教育の利益を受けるのは教育を受ける個人だという考え方が根強い。大学などの高等教育段階において、日本の公的教育支出は
4689ドル。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスでは9000ドルをこえているのに、日本は、その半分程度でしかない。
 家計への直撃度は、日本の大学は5ヶ国中で一番高い。日本は突出して家庭に教育費負担を強いている国である。ヨーロッパでは多くの国で授業料は無償であり、大学に国が多額の支出をしている。日本は大学の授業料が高いうえに、奨学金制度もきわめて貧弱である。日本の奨学金は7000億円。アメリカでは、なんと13兆円である。しかも日本の奨学金制度は無利子から有利子となり、総額も減少するなど、財政難から後退し続けている。私も月3000円の奨学金をもらっていて、弁護士になって数年して返済を終えました。
 思い切って少人数学級にして、学力の高い子も低い子も、今以上に指導の行き届いた教育を受けさせる。そのことが、それぞれの学力を高めることになる。
 そうなんです。コンクリートより人なんですよね。人間への投資を高めてこそ、日本という資源の乏しい国が浮揚することのできる唯一の道だと私も確信します。大変示唆に富んだ、いい本でした。
 司法修習生に給与が支払われていた制度が廃止され、貸与制になろうとしています。日弁連は給与制の廃止を止めさせようと頑張っています。人間を大切にするためには、まずはお金が必要です。ゼネコンのためにしかならないような空港や新幹線、ムダの典型である戦車やヘリ空母などをつくるのを止めたら、すぐに実現できることなんです。ぜひぜひ、流れを人間本位に変えましょうよ・・・・。
(2010年7月刊。800円+税)
 ネコヤナギの木が根元から腐れ、倒れ掛かって残念ですが掘り起こして片付けました。幹を切ると、空洞になっていて、たくさんのアリが棲みついていました。ノコギリを手にしていると、怒ったアリが腕に噛みついてきて、痛い思いをしてしまいました。棲みかを襲われてアリが怒るのも無理はないのですが、こればかりは仕方ありません。数日後、アリ軍団はどこかへ姿を消してしまいました。
 いま、庭にはピンクの芙蓉の花、そして淡いクリーム色のリコリスの花が咲いています。芙蓉のほうは、酔芙蓉も咲き始めました。朝のうち真白で、午後から酔ったように赤くなっていく花です。
 リコリスはヒガンバナ科です、今年は猛暑が続いて万寿社下の赤い花は咲き遅れているようです。稲刈りも間近となりました。

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