弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年7月25日

源氏物語とその作者たち

日本史(平安時代)

 著者 中村 亨 、文春新書 出版 
 
  弁護士になって、浮気や不倫・不貞は日常茶飯事であり、ありふれたことの一つでしかないことを痛感します。この36年あまりの弁護士生活において、不貞にからむ事件が絶えたことはありません。金銭貸借をめぐるトラブルと同じように、申し訳ありませんが弁護士にとってのメシのタネの一つです。
 この体験からすると、不貞行為は日本人の本性に深いところで根づいているものではないかと思わざるをえません。源氏物語は、そのような日本人の心性の始まりを文学的に描いた作品ではないでしょうか。つまるところ、男女の浮気、不貞、不倫を奨励するかのような話のオンパレードなのですから・・・・。
そして、著者は、源氏物語の作者は紫式部一人ではなかった、多くの読者が書き写しながら勝手に書き足していった集大成なのだと主張しています。
 今のように、活版印刷による本なんて当然なく、すべては人の手によって書き写していた時代ですから、写し間違いだけではなく、故意に書き足し、書き落としがあったのでしょう。また、それは避けられないことでした。だって、誰にせよ、どれが原本(正本)なのか、分かるはずがなかったのですから・・・・。
 源氏物語が、必ずしも「いづれの御時にか」から書き出されたとは限らないという考えは昔の人も持っていたらしい。紫の上につながる話は紫式部の原作であり、玉鬘(たまかずら)系の巻々は複数の別人の筆になるものだろうと考えられている。
 うむむ、そうなんですか・・・・。
 読者はすぐに作者になることにためらいのない時代であった。・・・・えーっ、そうでしたか・・・・。藤原頼通も源氏物語の作者のひとり、少なくとも作者たりえた存在である。
 ふむふむ、そのように考えられるのですか・・・・。これだから歴史物の本を読むのはやめられませんね。固定観念がうちこわされてしまう面白い本でした。
(2010年3月刊。770円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー