弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年7月 2日

日米核密約、歴史と真実

社会

著者:不破哲三、出版社:新日本出版社

 核兵器のない世界は私たち誰しもが願うところだと思います。オバマ大統領がプラハ演説のなかでそのことを高らかに宣言したことは、この分野での具体的前進に期待を持たせるものでした。そして、この6月に、ニューヨークで開かれたNPT(核不拡散条約)の再検討会議は、それを前進させることで一致をみました。素晴らしいことです。ただし、私たちは他人事(ひとごと)のように手を叩き、腕を組んで模様眺めをしていてはいけないと思います。
 日本政府は「非核三原則」(核兵器をつくらず、持たず、持ちこませず)を守ってきたと言っています。おかげで佐藤栄作首相はノーベル平和賞を受賞したのでした。ところが、実は、佐藤首相はアメリカとのあいだで核に関して、日本に持ち込むことを認める密約を交わしていたというのです。それが核密約の問題です。問題は、これが単なる過去の話ではないということです。
 アメリカは、今でも(オバマ政権においても)、依然として先制核攻撃戦略を基本としている。そのため、アメリカは「重大な緊急事態」が起きたときには、核兵器をふたたび沖縄に持ち込む必要がある。日本は、そのとき、直ちに承諾する。これが核密約の中味である。沖縄にあるアメリカ軍基地に、今は核兵器はない。しかし、何かあったら、アメリカが核弾頭を持ち込む。すると、直ちに核攻撃基地として活用できる機能をもった基地として整備され維持されている。
 いやはや恐ろしい内容です。
 アメリカ政府は、事前協議の制度はつくるけれども、肝心なことは、日本政府と相談しないですむ、これまでどおり、アメリカが勝手にやれる、この道を見つけ出すことが、安保条約改定交渉(1958年10月)の一番の核心だった。
 そして、日本政府は、それを受け入れた。しかし、日本政府は万一それが明るみに出たときに言い逃れができるように、この秘密の合意文書に「討論記録」という名前をつかった。しかし、どんなタイトルをつけようと、それは国家間の法的拘束力をもつ合意文書なのだから、まさに条約にあたるものなのである。
 日本政府は表向きでは事前協議なしに核兵器の持ち込みはありえないと言いつつ、実は、こっそり事前協議を事実上、空洞化させる取り決めをアメリカと結んでいたわけです。
 この核密約について、アメリカ政府は、「密約」の秘密性を維持する必要はなくなったと考えて、機密指定を解除して「核密約」の内容を公表している。そこで、日本共産党の調査団がアメリカの公文書館の膨大な書類のなかから、この「核密約」そのものを探り宛てることが出来た。
 しかし、日本政府は、核密約なんて存在しないと今も言い張っている。
 そして、現在の民主党政権も自民党政権と同じく核密約を廃棄するつもりはないと明言している。
 こんなインチキはありません。許せないことです。
 アメリカ軍のある提督は、「1950年代の早い時期から核兵器は通常、日本の港湾に寄港している空母の艦上に積載されてきた」と発言した。
 核密約の問題は、決して過去の歴史問題ではない。アメリカは、今は艦船や航空機に日常の体制としては核兵器を持たせない体制をとっているというが、核戦略を放棄したわけではない。現在も、核戦略を強固に堅持しており、その発動を必要とする事態が生まれたら、アメリカの艦船や飛行機は核兵器を積んで行動することになる。
 そのとき、核兵器を積んだ艦船や飛行機が日本に自由に出入りできる仕組みが、この秘密協定によって今なお存在し、その意味で、被爆国である日本が現在も核戦争の出撃拠点となっているのであり、ことは重大である。
 この本を読んで、なにより腹が立ったのは、日本政府は表向きは「非核三原則」を口にするものの、実は、日本を守る「核」がなくなったら困る、だからアメリカには核兵器は積んでいてほしい、おろさないでくれと頼んでいるという事実です。ひどい話です。許せません。
 沖縄の普天間基地の「県外移設」が、いつのまにか「県内移設」で収拾されようとしています。しかし、そもそも、このような核密約をふくめて、日本政府はあまりにもアメリカ言いなり過ぎます。弱腰だというのではありません。まるで主体性がないのです。こんなことでは世界から笑いものにされるだけではないでしょうか。
(2010年6月刊。1300円+税)
 日曜日、雨が上がりましたので、午後から庭に出て少しだけ手入れをしました。いま、ぐんぐんとヒマワリが伸びています。朝顔のツルも塀にそって上へ上へと伸びあがっているので、楽しみです。
 近くのレストランの店主さんからいただいたキューリの苗が、みごとにキューリを実らせてくれました。早速、3本もいで、水洗いして、マヨネーズを少しかけて丸かじりしました。とても新鮮な味です。産地直送、完全無農薬、もぎたての野菜は本当においしいですよ。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー