弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年11月12日

同和と銀行

社会

著者 森 功、 出版 講談社

 同和問題を食い物にする解同(部落解放同盟)と暴力団、そして、それとまったく癒着した銀行のみにくい姿が赤裸々に暴露されている本です。そのすさまじいばかりのおぞましさに身震いしてしまいます。
 この本に登場する主要人物は、部落解放同盟大阪府連合会飛鳥支部長であり、三菱東京UFJ銀行の課長です。
 解同飛鳥支部の小西邦彦支部長は、暴力団三代目山口組金田組の構成員でもありました。
「小西枠は5億。小西案件はいっさい3階の役員室に持ち込んだらあかん」
小西との取引について、三菱UFJ銀行では、支店の決裁ですべて終わらせ、本店に取引案件を持ち込むような真似をするな。このように指示されていた。
 同和対策事業特別措置法が1969年に施行されて以降、2002年に法が失効するまで、15兆円もの事業費がつぎこまれた。ゼネコンにとって莫大な利権である。だから、同和団体の実力者に取り入ろうと懸命になった。
 小西邦彦は、税務当局にも強かった。それには、国税当局と部落解放同盟の間には「7項目の確立事項」があった。密約である。この密約では、同和事業については、課税対象としないと明記されている。この密約を取り交わした大阪国税局長は、のちに大蔵事務次官にまでのぼりつめた高木文雄である。
 いやはや、同和事業でどんなにインチキがなされても、税務署は一切手を出さないという密約があっただなんて、法治国家日本の看板が泣きますね。しかも、その人が大蔵省トップに上り詰めていたなんて、どうなってんでしょうね。日本の官僚システムは……。
 さらに小西邦彦は、警察とも癒着していました。東淀川警察署では、幹部が着任すると小西に必ず挨拶に来ていたし、小西が歓送迎会を開いた。去っていく前任者のポケットに「封筒」を突っ込む。小西は警察官の再就職の面倒もよく見ていた。
 小西は、西條秀樹の結婚披露宴の主賓として招かれていた。芸能界にも顔が広かったのですね。山口組の田岡組長もそうでしたよね。
 暴力追放とか差別をなくそうという掛け声がうわべだけだということが良く分かる本でした。
 秋も深まりました。熊野古道では全山が紅葉していました。遠くの山にイーデス・ハンソン氏の居宅を眺めました。かなりの高さにあるので、日常生活には不便かなと余計な心配をしてしまいました。それはともかく、我が家の庭のスモークツリーの紅葉も見事なものです。鮮やかな赤色です。緋色というのでしょうか。
 隣のエンゼルストランペットの黄色の花とよく似合っています。
 球根の植え替えをすすめていますが、水仙がどんどん伸びています。
 
(200年月刊。円+税)

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