弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年8月19日

「特捜」崩壊

司法(警察)

著者 石塚 健司、 出版 講談社

 東京地検特捜部に対する、ここ数年聞かれる危惧の声は、これまでのものと次元が違ってきている。機能不全の兆候があるという。元特捜検事たちから、古巣の特捜部に対する不審や危惧の言葉を聞くことが増えている。
 特捜部の任籍期間が徐々に短くなっている。かつては10年以上がザラだったが、現在は特捜部長で6年、副部長で5年となっている。人材育成のシステムが失われてしまった。そして、特捜部長の前任地は法務省の行政職だというケースが最近は多い。
 現在の特捜検察の問題点として、上意下達型、悪者中心型、劇場型の3つのキーワードがある。
検事の隠語のなかに、自動販売機というのがある。取調官に迎合し、何でも言われるままに認める状態になった相手の人間を言う。相手が自動販売機になったとき、調子に乗って作文した調書に次々と署名させていった結果、明白な事実と反する内容の調書まで法廷に出す失敗を犯し、弁護側に矛盾を突かれて、調書全体の任意性を否定されたという例もある。だから、自動販売機の取り扱いには細心の注意が必要で、しつこく事実を問い正し、供述の裏付けを取らなければならない。ふむふむ、なんだか思い当たります。
 自民党の新井将敬代議士は、1998年2月、特捜部の捜査を受けていた最中に自殺した。新井代議士は、まったく面識はありませんが、私と同じ団塊世代であり、東大闘争のときには過激派というべき全共闘の闘士だったそうです。
 真実の究明よりも、有罪の判決を得ることのみに全力を注いだように見える取調べ。これが現在の「日本最強の捜査機関」の実態であることはさびしい限りだ。
 そもそも特捜部は、警察には適さない、専門的な法律知識が必要な捜査をすることを建前としている。現在、国税庁、証券取引等監査委員会、公正取引委員会という強制調査権限を持つ3機関からの告発事件の捜査を一手に扱うほか、情報提供や告訴・告発を受けて独自の捜査をすることができる。
 全国に50ある地検のうち、東京・大阪・名古屋の3地検のみに特捜部が置かれている。福岡にはないのですね……。
 東京の特捜部は、検事32人と副検事2人、事務官91人の計125人いる。警視庁捜査2課(知能犯を扱う)や国税局査察部とは、比較にならないほどの小さな組織でしかない。
 検察庁の捜査能力が低下したため、そのかげで高笑いしている政治家や財界人、そして暴力団などの闇の勢力がたくさんいるのでしょうね。残念です。
 お濠のハスの白い花の上を、赤とんぼがたくさん飛んでいます。ツクツクボウシが鳴き始めて、昼間から秋の気配を感じられるようになってきました。
 我が家の庭の秋明菊も、ツボミをふくらませつつあります。夜になると、虫の音も勢いを増してきました。今年は、セイケンコータイ、セイケンコータイと盛大に鳴くのでしょうね。でも、中身が良くなる政権交代でないといけません。看板だけ付け変わることのないようにしたいものです。

(2009年4月刊。1500円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー