弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年2月18日

CIA秘録(上)

アメリカ

著者 ティム・ワイナー、 出版 文芸春秋

 CIAのおぞましい歴史が次々に明らかにされています。腐臭プンプンで、読み続けるのが厭になってしまいますが、目をそらすわけにはいかないと思い、読みすすめました。
 CIAの秘密工作は、おおむね闇夜に鉄砲を撃つようなものだった。CIAは海外での失敗を隠し、アイゼンハワー大統領にもケネディ大統領にも嘘をついた。ワシントンでの自分たちの立場を守るためだ。CIAは、大統領が聞きたくないことを取り入れることが危険であることを学んでいた。
 CIAはソ連の内実を知るスパイを一人としてリクルートできたことはなかった。スパイはいたが、いずれも先方からの自発的協力者であり、CIAが獲得したわけではない。そして、これらのスパイは、みな死んだり、ソ連によって処刑された。そのほとんどは、アメリカにいるCIAのソ連部門の職員に裏切られたためだ。
CIAは、イラクに大量破壊兵器があるという間違った報告をホワイトハウスに送った。ほんのわずかな情報をもとにして大量の報告をでっちあげた。
CIAは日本の右翼そして自民党を育成するため大金をつぎ込んだ。
 児玉誉士夫についてのCIAの報告は次のとおり。
 児玉は職業的な嘘つきで、暴力団、ペテン師で、根っからの泥棒。児玉は諜報活動のまったくできない男で、金儲け以外のことには関心がない。
 CIAは、そんな男と長く密接な関係を持っていたのでした。
 CIAと自民党とのあいだでは情報とお金が交換されていた。自民党を支援し、内部の情報提供者を雇うため、お金が使われた。将来性のある若手政治家にお金をつぎこみ、力を合わせて自民党を強化し、社会党や労働組合を転覆しようとした。
 自民党にお金を渡すのは、高級ホテルで手渡すというやり方ではなく、信用できるアメリカのビジネスマンを仲介役に使って協力相手の利益になるような形でお金を届けた。
 岸信介は、CIAと二人三脚で日米安全保障条約をつくりあげていった。
 CIAの役割を知らない日本の政治家は、アメリカの巨大企業から提供されたお金だと伝えられた。自民党へは、4代15年間、CIAからお金が流れ、自民党の一党支配を強化するのに役立てられた。1960年には7万5000ドル、1964年には45万ドルがCIAから自民党に提供されている。
 むひょーっ、自民党はCIAのお金で育成されてきた政党なんですね。こんな政党が日本人に愛国心を持てと説教をしているのですから、世の中の倫理が間違ってしまうのも当然です。それにしても情けない話ではありませんか。自民党の側から反論も弁明も何もなされていないことにも腹ただしい限りです。黙殺してしまおうということなのでしょうか……。
 ケネディ兄弟(大統領と司法長官)は、キューバのカストロ首相(当時)の暗殺にゴーサインを出し、その実行に執念を燃やしていたことが明らかにされています。ケネディ暗殺は、その仕返しだったと言わんばかりの記述がなされています。これは、本当でしょうか。
 CIAがその名前から想像されるほど、インテリジェンスに富んだ集団でないことがよくよくわかる本でした。
(2008年11月刊。1857円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー