弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年10月18日

細胞の意思

著者:団 まりな、 発行:NHKブックス

 生命の神秘に迫る本です。私は神様の存在を信じていませんが、いったい何も考えているはずのない(?)細胞がどうして自主的に合理的な行動をするのか、不思議でなりません。それは神様が導いているのだと○○教信者なら言うのでしょうが、「神様の意思」がどうやってこのミクロの世界で細部にわたって反映されているのというのか、そこでまた謎が生まれます。
 細胞は直径10ミクロン(1ミリの100分の1)ほどしかないので、顕微鏡を使わないと見えない。だが、肉眼で見える細胞もある。たとえば、鶏の卵の黄身、イクラやスジコ、数の子やウニ。これらはすべて卵(ラン)である。
今は細胞内にあるミトコンドリアは、昔、独立のバクテリアだった。バクテリアのなかのあるものが大昔に、太陽の光からエネルギーを取り出すという特殊な能力を持つタンパク質を持った。そして、このエネルギーを利用して空気中にふんだんにある炭酸ガスから有機物を作るようになった。これが光合成細菌(シアノバクテリア)の出現である。
 いま、人間にとって必須不可欠の酸素は、この頃のバクテリアにとっては猛毒でしかなかった。この猛毒から身を守るため、あるバクテリアは地中深くに潜り込み、別のバクテリアは何匹か融合して身体を大きくし、DNAを細胞膜に付着させたまま体内に取り込んだ。これがミトコンドリアの祖先である。ミトコンドリアの祖先は、酸素を利用してブドウ糖から効率よくエネルギーを取り出す代謝経路を作り出すことに成功した。毒を薬に変えてしまったのである。ミトコンドリアを包む二重の膜が二枚とも完全に閉じているのは、ミトコンドリアがもともと「よそもの」だったからである。
 たとえば、自分が当面目指していることが成し遂げられないと悟った細胞は、しかるべき方法で自分の身体を退縮させ、「私を食べてください」という掃除屋細胞にあてた信号を細胞表面に出し、迷い込んだその場から潔く身を引いていく。
 受精卵が透明帯をかぶっているのは、一個の細胞としては身体が大き過ぎて、こうでもしておかないと、ちょっとした衝撃で破裂してしまう危険性が高いから。ちなみに受精卵は、普通の細胞に比べて2000倍もの体重を持っている。
 そして、1日に1回の分裂を繰り返し、3日目には8細胞となる。
 このように、細胞は単なる入れ物ではなく、原始のように小さく規則的なものでもなく、フツーの人間と同じように様々な状況を把握し、あの手この手で切り抜けていく生活者である。
 うむむ、細胞とは、生きた生活者というわけなんですか……!?
 庭の片隅にハゼの木があります。私が植えたのではなく、いつのまにか育って大きくなりました。細かった幹も、今ではずいぶんと太くなり、その時期になると毎年、見事に紅葉します。今がちょうどそのときです。
 実は、何の木か分からなかったのですが、近所の人にハゼの木だと教えてもらいました。
 私は小学生の頃、ハゼの木を手に持ってチャンバラごっこをして、その汁にかぶれて顔一面が腫れあがり、お岩さんのようなかさぶたができて一週間学校を休んだことがあります。大きくなりすぎて屋根の雨樋かかるので、切らなくてはいけないのですが、またかぶれてしまわないか心配しています。
(2008年7月刊。970円+税)

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