弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年8月22日

「アフリカに緑の革命を!」

世界(アフリカ)

著者:大高未貴、出版社:徳間書店
 南アメリカには次々にアメリカの言いなりにならない自立的な政権が出来て、国づくりが前進しているように思いますが、アフリカの方はなぜか遅々とすすみません。
 1960年代初頭のガーナのエンクルマ大統領(アメリカによって暗殺)をはじめとして、すごく新鮮な独立の息吹を感じたものですが・・・。一体、どうしたのでしょう。この本は、そんな困難なアフリカで地道な活動を続けている日本人の団体を紹介したものです。なるほど、なーるほど、大変な苦労があるのだろうな、本当にご苦労さまです、と思わずつぶやいたことでした。
 その仕掛け人は、なんと右翼の大立者のあの笹川良一です。うへーっ、そ、それだけでうさんくさい。つい、そう思ってしまいますが、この本で語られていることは、なかなかどうして、アフリカでは立派なことをやっているようなのです。
 当時の日本財団の会長であった笹川良一は、物資援助では根本的な解決にならないと考えて、アメリカのジミー・カーター元大統領にも協力を求めてNGOを設立した。アジアに「緑の革命」をもたらし、ノーベル平和賞を受賞したノーマン・ボーローグ博士に協力してもらった。SG2000とよばれるNGOだ。飢えた者に一匹の魚を与えるよりも、魚を釣る方法を教えるほうが、ずっと効果的で効果がある。なるほど、それは、そのとおりです。
 アフリカに出張するときの必需品は、下痢止め、痛み止め、マラリアの薬、トイレットペーパー、そしてミネラルウォーター。どんなときでも必ず薬とトイレットペーパーをもち歩く。食欲がないときでも、無理にビスケットを食べて紅茶で胃に流しこむ。アフリカではミネラルウォーターでも信じられない。安心して飲める冷たい飲み物はコーラだけ。それから、薬も飲んだらいけない。インドやブラジルから安くて悪質な偽薬が大量に入り込んでいる。うひゃあ、そ、そうなんですか。でも、信じて飲んだら効くのが薬ですよね。
 アフリカでは、今日は1食たべられたぞ。オレはリッチだ!が標準である。アフリカでは、人々は明日どう生きるか、より、今日どういきるのかに主眼を置いている。
 農民は字が読めないので、ビラやパンフレットをつくっても意味がない。アフリカのマスメディアはラジオである。
 アフリカの男性が怠惰な理由はマラリアによる。何度も発病すると、体に力が入らなくなって、だるさから通常の日常生活が送れなくなる。
 アフリカには援助貴族という言葉がある。国連などからの莫大な援助収入の大半が政府高官のポケットに収まってしまう。たとえば、ナイジェリアでは、年間外貨収入120億ドルのうち100億ドルは政府高官のポケットにおさまってしまう。そこで、援助する側が現金でダメなら現物援助にしたら、今度は現物が消えて闇市で高く売られていた。
 SG2000は、無料配布はしない。あくまで農民の経済的自立を促すためのものであるから。従来の援助方式が本当に有効なものだったら、いまアフリカに饑餓や貧困の問題は起きていないはず。
 SG2000は、現地アフリカに甘えの構造をつくらないよう努力している。たとえば、現金のやりとりを一切しない。すごいですね。心からの拍手を送ります。
(2008年4月刊。1500円+税)

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