弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年7月18日

中堅崩壊

社会

著者:野田 稔、出版社:ダイヤモンド社
 日本の中堅というべき階層が育っていないというのは重大な問題です。著者は次のように指摘します。
 バブルミドルといわれるミドル層の弱体化を嘆く経営陣が、実は、その弱体化を招いた一連の政策変更の企画者であり、実行者であった。経営陣は、10年以上もしっかりした教育を受けさせず、目先の利益だけを追求することを求め、一つの場所に塩漬けにしてきた。ミドル層を責める資格はない。ふむふむ、そうなんですか。ということは団塊以上の世代に大きな責任があるというわけです。
 評価制度には限界がある。評価制度に頼ると、評価する人間が無責任になる。できるだけ運用は柔軟にして、時間と人手をかけてアナログに評価するのが正しい。なるほど、そうなんですね。
 部下を働かせないようにしようと思えば、次の3つを徹底すればいい。無視する。任せない。ほめない。これをしたら、人間は病気になるか、辞めてしまう。逆に、認めて、任せて、ほめるをやったら、みんな、一所懸命に働くだろう。
 なーるほど、ですね。いいことを教わりました。
 好奇心、こだわり、信念、柔軟性、楽観性そしてリスクをとる気概が必要だ。とにかく努力し続ければ、必ずチャンスは向こうからやって来る。没頭してやり続けていないと、そのチャンスは見えない。没頭する喜び、没入体験の醍醐味を一度でも経験したら、また没頭しようとするので、そこに努力のスパイラルが起こってくる。ところが、その体験のない人は、没入することを恐れてしまうし、労を惜しむ。だから、できるだけ早い段階で仕事への没入体験を与えてあげることが必要だ。いやあ、そういうことなんですか。私も実践してみます。
 失敗してもいいからやってみろ、責任は私がとる。これを本気で言えるかどうか。これが、キーポイントだ。こうなると、やってみるしかありません。
 今はそもそも負けん気の強い人が少ない。仕事は仕事と割り切り、言われたことはやるが、言われないことまではやらない。そこまでやっても何の得もないと考える。そういう人材を放っておいても伸びず、停滞してしまう。
 コミュニケーション能力というか、姿勢が大切だ。自分から歩み寄り、関係する。いろんな関係者と話をする。聞く姿勢があって初めて、折衝能力とか調整力が生まれ、危機を察知することもできるようになる。
 いろいろ参考になることの多い本でした。
 私の法律事務所でも、既に3人の希望者をお断りしました。コミュニケーション能力にとても不安を感じたからです。忙しい私たちは、どうしても即戦力を求めたいのです。すみませんが・・・。
(2008年3月刊。1700円+税)

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