弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年4月30日

携帯電話はなぜつながるのか

社会

著者:中嶋信生、出版社:日経BP社
 私も、もちろんケータイは持っていますが、実のところ一日一回もつかいません。自分でかけることもないし、かかって来ることもありません。依頼者には絶対教えないし、知っている人でもほとんどかけては来ません。いつもカバンの中に入れていますので、鳴っていても気づかないことが多くあります。それでもケータイを持ち歩くのは、公衆電話がすごく少なくなったからです。小さな裁判所からは公衆電話が撤去されてしまいました。福岡地裁本庁にもいくつかしかありません。相手方と交渉するときには私のケータイ・ナンバーを知られたくないので、必死で公衆電話を探します。ホント、苦労します。
 そんなケータイですが、いったいなぜこんな薄っぺらな機械ですぐに全国にいる人と通話ができるのか、不思議でなりません。それに、最近よく目立つケータイ用のアンテナ塔。低周波公害が問題となりましたが、電磁波公害はどうなんでしょうか。なぜ、あんなに高密度にあちらこちらにアンテナ塔が必要なのでしょうか・・・。
 ケータイは、多くの装置やノードビルを経由してつながっている。
 NTTドコモのFOMAは、屋外に3万5000局、屋内にも1万の無線基地局がある。郵便局は全国に2万、小中学校は3万4000校ある。それと同じくらいの多さだ。
 ケータイの特徴は、音声とデータの2本立て。ケータイの本質は次の3つ。移動すること。電波をつかうこと。
 ケータイがどこにいても瞬時に相手を見つけて着信できる秘密はホームメモリーにある。
 ケータイは、途中に大きなコア・ネットワークという有線のネットワークが介在している。ケータイは、音声を5K〜10Kbpsという低速で送る。
 ケータイは、いつでも送受信できる状態にしておくと電池がすぐになくなってしまう。そこで、待ち受け時には着信に必要な最小限の機能だけを動作させておいて、送信機には通電しないように工夫している。つまり、ケータイは必要なときだけ通電し、あとは通電せず、電池の消耗をおさえる間欠受信と呼ぶ技術をつかう。
 ケータイと無線基地局との間は電波で接続している。しかし、無線基地局から先は、光ファイバーなどでつないで、いくつかの装置をつかって、相手の最寄りの無線基地局まで音声を伝送している。
 ケータイで音を送るときに欠かせないのが音声コーデック。アナログの音声をデジタル・データに変換する機能・装置のこと。
 音声通信は、会話が不自然にならないように、送信から相手に届くまでの遅延を0.1秒以下におさえたリアルタイム通信が必須条件。データ通信では1秒や2秒遅れても差し支えない。そこでデータ通信はパケット通信をつかう。パケット通信は、待ちの時間をつかうので、リアルタイムの通信はできない。
 音声データをブロックに分割したあと、特徴を抽出して音量や波形を分類する。符号化装置は、さまざまな波形を記録した辞書をもっており、送信しようとする波形にもっとも似た波形のパターンを波形情報のかわりに相手に伝送する。音量など、ほかの 情報も並列に伝送する。
 受信側は、送られてきた波形コードにしたがって辞書を引き、元の波形を復元する。この方法によって、伝送すべき情報量は非常に少なくてすむ。音声品質の良さは、辞書の良さにかかっている。
 結局のところ、よく分かりませんでしたが、なんとなくイメージがつかめたところもあります。基礎的な知識がないと分からないという典型ではありますが、それでもあきらめずに、今後とも、この種の本にも挑戦します。
(2007年7月刊。2400円+税)

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