弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年4月30日

読む力は生きる力

社会

著者:脇 明子、出版社:岩波書店
 ほんとうにすばらしい本は、読む人を自分だけの世界に閉じこもらせるのではなく、書き手と読み手とを人間的な共感でつなぎ、何か大切なものを受け取ったことによって開かれた新しい目で、まわりの世界を見直すように促す。
 人間の生存に不可欠な衣食住だが、人間は、それだけでは生きていけない生きものだ。
衣食住に加えて何が必要かというと、それは自尊心である。自尊心とは、自分には生きていくだけの価値があると思うこと。この世のなかで、いくらかの場所を占領し、食べものを食べ、水を飲み、空気を吸っていきていてもかまわないのだ、と思うこと。そう信じられなくなったとき、私たちは生き続けるために必要な気力を失い、ときには生命を絶つことさえある。
 私たちに一生にわたる自尊心の基盤を与えてくれるのは、幼いときに育ててくれた親や、それにかわる人々の、無条件の愛情だ。ところが、幼稚園や保育園などの集団に入ると、親の愛の上に築いた自尊心は、もろくも崩れてしまう。自分にとっては絶対であった親が、世の中のたくさんの人たちの一人にすぎないことが見えてくる。そうだとすると、その親に保証してもらった自分という存在の値うちも、ちっぽけなものにすぎないことが明らかになってしまう。そこから、子ども自身による、自尊心回復のための戦いが始まる。それは、なんでも自分が一番だと言いはじめたりすることにあらわれる。しかし、それは、子どもなりの自尊心回復の手段なのである。
 うむむ、なるほど、なーるほど、そういうことだったのか。この指摘に、私は思わずうなってしまいました。
 想像力をトレーニングしていけば、やがて、言葉による描写から人物や情景を思い浮かべることもできるようになる。これは、本を読むのに不可欠な力であって、読書が苦手だという子どもの大半は、この力がうまく身についていない。
 想像力は、とっぴな空想をめぐらす力なのでは決してなく、現実の世界で先を予想して計画を立てたり、さまざまな人とうまくコミュニケーションをとったりしていくうえで、万人に必要な能力なのである。そ、そうなんですね・・・。
 子どもには旺盛な好奇心とともに、臆病さもあって、一度何かでつまづくと徹底してそれを避けようとし、そのために世界を狭めがちになる。子どもは、柔軟であるかと思うと、ささいなことが原因で、とんでもない偏見をいだくことも多い。
 子どもが狭い世界に閉じこもろうとしているようなら、うまくその偏見をときほぐし、新しい出会いのチャンスを増やしてあげるべきだ。それもまた、冒険の付添人としての、身近な大人の果たすべき役割だ。
 なーるほど、これは、偏食についても言えることではないでしょうか。大人が、何でも、おいしい、おいしいと言って食べていると、子どもも安心してどんなものでも食べるようになると私は思います。
 いまの子どもたちを取りまく娯楽の多くが、情報満載の型である。子どもたちは、たっぷりと盛り込まれた情報を読みとって楽しんでいるのではなく、情報が満載されたにぎやかさを、感覚として喜んでいるにすぎない。
 情報量の多さを子どもを喜ぶようになったのは、映像メディアつまりテレビの影響だ。 映像は本に比べて、はるかに大きな力で見る者をとりこにする。映像を見ながら、物事を筋道立てて考えるというのは、非常に困難である。
 読書力は、全体を見渡して論理的に考える力を身につける。
 なーるほど、そうですね。そうだよね、と思いながら読んだ本です。
(2005年1月刊。1600円+税)

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