弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年3月31日

犬たちがくれた音

著者:高橋うらら、出版社:金の星社
 聴導犬誕生物語、というサブ・タイトルのついた本です。現在、日本で認定されている聴導犬は10頭あまり。
 補助犬には、盲導犬、聴導犬、介助犬の三つの種類がある。
 アーク(アニマルレフェージ関西)は大阪府の山の中にある。阪神大震災のあと、1年間で600頭の動物を預かった。たとえ雨の日でも、一人一日20頭の犬を散歩させる。
 聴導犬に向いているか、いくつかのチェックポイントがある。犬が、もし、おなかを上に向けたままだっこされたり、足をさわられたりしても怒らなければ、それは人間になついて、リラックスしている証拠だ。おもちゃを取りあげられて怒る犬は不向き。なんでも自分だけのものにしたがる犬は、聴導犬の仕事に集中できない。
 このテストに合格できる犬は、300頭に1頭ほど。
 盲導犬の場合は、子犬育てのボランティアをパピー・ウォーカー(子犬と一緒に歩く人)と呼ぶ。 聴導犬についてはソーシャライザー(人間の社会にあうように育てる人)と言う。
 ソーシャライザーになる条件は、1日3時間以上、犬を一人きりにしない、室内で犬を飼えること、ほかの犬を飼っていないこと、月1回のパピー・クラスに参加できること、協会の方針に従えること、人間の子どもを育てるように、甘やかさず、愛情をもって育てられること、があげられる。
 ソーシャライザーは、預かった犬に愛情をたっぷり与え、家族の一員としてかわいがる。人と一緒に暮らしたり、人のために働くことが好きになるようにする。
 犬の育て方の基本は、犬を決して叱らず、どんどんほめて、ものを覚えさせる。
 ソーシャライザーは、やさしい言葉をかけながら子犬の相手をし、子犬がいいことをしたら、それをほめて、やる気を出させる。
 しかし、犬をいつもかまっていると、犬は相手をしてもらえないとすねるようになる。そのため、わざと短い時間だけでも、犬を無視する時間をつくる。かまってやるときは、思いきりかまってやる。すると、少しの間待つように言われても、犬は安心してじっとしていられるようになる。
 トレーニングは犬が集中できる短い時間(せいぜい15分間)だけ行い、楽しい気分で終わらせることが大切。犬がトレーニングは楽しいものだと思えば、次も喜んで人の言うことを聞こうとする。犬は、もともと人にほめられるのが大好きなのである。
 生まれて1年のあいだに、犬は人間でいうと17〜20歳に育ってしまい、性格もどんどん変わっていく。聴導犬として育てる犬には、人と同じものは食べさせない。レストランで料理をほしがったりしては困るから。犬がいたずらして困ったときには、さわがないで無視し、かまわない。騒ぐと喜んでくれたと犬は勘違いしてしまう。
 ソーシャライザーは、育てる子犬を数ヶ月ごとにほかのソーシャライザーと取り換える。これは、さまざまな環境で育つようにするため。なーるほど、ですね。
 犬のことがよく分かる本でした。といっても、犬も人間も変わらないところがあるんだなと、つい思ってしまいました。
(2007年12月刊。1300円+税)

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