弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年2月15日

脳内汚染からの脱出

社会

著者:岡田尊司、出版社:文春新書
 ゲームが依存しやすいものとなってしまうのは、際限のない繰り返しが容易にできて、しかも、刺激のレベルが徐々に上がっていくように、巧みにつくられているため。耐性ができにくいように、さまざまなノウハウの粋を集めてつくられている。
 強い刺激に慣れっこになることは、単に刺激に対して無感覚になるということではない。強い刺激なしでは、神経のバランスが保てない状態に陥ってしまうのだ。その刺激が途絶えると、激しい渇望状態にとらえられる。禁断症状である。
 韓国では、複数の人が一緒に集まってゲームを楽しむことが多い。日本では、一人で孤独に楽しむのを好む傾向がある。
 1980年代以降に噴出するようになった子どもの問題の特徴は、大都市部と地方の差が少ないこと。校内暴力は、地方の農村部でも同じように見られた。
 ゲーム依存は、インターネット依存の場合、アパシー状態が生じていることや原因について、自覚のないことが大半である。何かやる気がない、何も他に面白いことがない、仕事も人間関係もわずらわしい、もうどうでもいいやという考えに陥っている。
 ヴァーチャルなメディアに依存した子どもや若者に共通するのは、表情が乏しくなり、非言語的コミュニケーションの能力が低下していること。
 視線が重要だ。目は口ほどにものを言う。視線をほどよく合わせることは、コミュニケーションの基本である。しかし、ゲーム、インターネットを長時間する人は、アイ・コンタクトが乏しくなる傾向がある。
 子どもの偏食は、発達の問題の一つのサインである。偏食がある子は、食べ物だけでなく、他の生活習慣や興味においても、偏りやすい傾向がある。
 依存症の理論からいって、毎日つかうのは、もっとも依存を形成しやすい。切れ目をつくるのが、依存を予防するのに大切なこと。30分であれ、毎日、ゲームをすることは、毎日、少量の覚せい剤を打っていることに等しい。
 タイトルから想像するより、よほど真面目で健実な提言が書かれている本です。大変勉強になりました。
(2007年5月刊。950円+税)

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