弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年2月 8日

カメの来た道

著者:平山 廉、出版社:NHKブックス
 カメの甲羅は、体の内部にある背骨や肋骨と完全に一体化している。カメでは胴体を動かすための背筋や腹筋などの筋肉がすべて失われている。
 カメには歯がない。スッポンやワニガメの咬む力は強く、人間の指なんか骨ごと切断してしまう。
 カメの首が甲羅の中にすっぽりと引っこむのは、首の骨(頸椎)の関節の仕組みにある。関節の可動範囲が非常に大きい。直角に折れ曲がるほどなので、首の長さが半分になってしまう。もう一つのカメのグループは、首を水平方向に折り曲げ、甲羅の縁にそって頭や首を隠すことができる。その動作は驚くほど素早い。
 大半のカメは、メスのほうがオスより大型化している。メスのカメは大きな卵巣を発達させている。
 カメは変温動物なので、夜に体温が下がったので、冷えた体を日光浴によって30度前後にまで上昇させ、代謝を活発にさせる必要がある。道理で、福岡の裁判所のお濠では午前中にカメが何匹も陽なたぼっこをしているのを見かけることができます。
 ゾウガメのように、人間の体重ほどにもなるカメが一日に必要とする食物は数百グラムにすぎない。エネルギー効率からいうと、変温動物は温血動物よりもはるかに経済的で、個体が餓死したりする危険性はきわめて低い。
 カメは社会性のある群れをつくることはなく、繁殖期をのぞくと、いちいち相手を認識する必要もない。目の前にいるのが餌なのか敵なのかを判断できればいいし、危険を察知したら首を引っこめればいいだけのこと。
 オサガメは史上最大級のカメで、全身2.4メートル、体重も900キロをこえる。体型はほぼ完全な流線型であり、最高時速24キロで泳ぐことができる。そのオサガメの主食はクラゲ。オサガメの子どもは、毎日、自分と同じ体重だけのクラゲを食べる。毎日 100キログラムのクラゲを食べなければならないということ。
 オサガメは、昼夜を問わず、ほとんど休むことなく泳ぎ続けている。これは熱をつくって体温を温かく保ち、冷たい深海に潜るための準備でもある。オサガメの体には大量の油が含まれている。
 このオサガメには、通常のカメにみられる甲羅はどこにもない。深海での強烈な水圧への適応形態である。オサガメは、クラゲのもっている毒を体内にもっているため、食用には向かない。平均的なカメの寿命は最大で100年程度。
 カメはトカゲやワニと同じ、爬虫類の仲間である。
 ウミガメが海の中に進出するときに最初に起きた大きな変化は、塩分濃度を調節するための涙腺の肥大であり、体のサイズや鰭脚の増大は二次的なものだった。
 カメは人間以上に寿命が長いので、必ずしもペット向きの動物とはいえない。
 いかにも一日中のんびり過ごしていて、何も考えていないように見えるカメの一生を改めて見直しました。
(2007年10月刊。920円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー