弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年9月20日

ひとり誰にも看取られず

社会

著者:NHKスペシャル取材班、出版社:阪急コミュニケーションズ
 孤独死は全国で毎年3万人ほど出ていて、実は自殺者の3万2000人を上まわるのではないか。ええーっ、と驚いてしまう数字です。いつのまに日本はそんな国になってしまったのでしょう。
 トントントンカラリンとお隣りさん、という世界は、はるか彼方の遠い昔のこと。今では、隣りは何をする人ぞ、というだけ。無関心、没交渉。お金がいくらかあっても、まさに人知れず死んでいく人がなんと多いことか・・・。
 最近、私の依頼者でアル中の人が死後3ヶ月ほどして発見されました。同じ市内に親兄弟が住んでいたのですが、アル中のため散々、身内に迷惑をかけていたため、ついに家を追い出され、一人でアパートを借り、生活保護を受けながら生活していたのです。発見の契機は、通院先の病院から、実家に「最近、通院されていませんが、どうしたのでしょうか」と安否を尋ねる電話がかかってきたので、アパートに行ってみたところ、死後3ヶ月たっていたというのです。発作をおこして病死したようです。痛ましい孤独死でした。
 孤独死の定義は、いろいろあるようです。
 孤独死とは、低所得で、慢性疾患に罹患していて、完全に社会的に孤立した人間が、劣悪な住居もしくは周辺領域で、病死および自死に至るときをいう。
 孤独死とは、すでに社会的関係が絶たれていて、その結果、誰も死に気づかず、死後かなりたってから、第三者に発見された場合をいう。
 千葉県松戸市にある常磐平団地は4、5階建ての中層集合住宅。入居開始は1960年4月。総戸数4839戸。入居完了は1962年6月。当時は入居希望者が殺到し、抽選倍率は、なんと20倍。
 当時としては、まさに夢の住まいだった。団地内に、保育所、幼稚園、小・中学校、郵便局、商店街まで備えた、一つの町、ニュータウンが誕生した。団地族が誕生した。人口のピークは、1970年ころ、2万人。一戸あたりピーク時4人、今は2人を下まわっている。65歳以上の住民が3割に達している。
 家賃滞納で孤独死が発覚するケースは、今はほとんどない。家賃を口座引き落としにしている人が9割以上だし、生活保護を受けていると、毎月、引き落としされる仕組みになっているから。人と人とのつながりが希薄になっているだけでなく、システムとしても孤独死が見えにくくなっている。このため長期間、放置されてしまうケースが出てくる。
 孤独死する人は、電話も止められていないのに、誰にも連絡することなく亡くなっていることが多い。うへーん、寂しい話ですよね、これって・・・。
 40代、50代、60代の中年男性の孤独死が、高齢者の孤独死を上回っている。
 孤独死を扱った番組に対して、読者からの投書には、なぜ孤独死してはいけないというのか、孤独死する覚悟はできているぞ、というものが多かった。
 これに対して著者は反論する。死を概念的にしかとらえず、「放置された死」がどういうものか知らないことも大きい。ウジがわき、ひどい臭いを放つ姿になった自分を、赤の他人に見られる。遺品もすべて他人の手に委ねられる。そして、それを処理する人の迷惑。現実の孤独死は、美学とはほど遠いものでしかない。
 うむむ、そうなんでしょうね・・・。考えされられる本でした。
(2007年8月刊。1400円+税)

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