弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年7月20日

ブッシュのホワイトハウス(下)

アメリカ

著者:ボブ・ウッドワード、出版社:日本経済新聞出版社
 いまイラクに駐留するアメリカ軍は13万人。当初の計画では、3万人ほどにするということであり、最大でも6万人のはずだった。ところが激しい武力衝突が絶えないため、アメリカは減らすことができない。1ヶ月にアメリカ軍が攻撃される件数は500件もある。2003年9月は750件、10月には1000件になった。1日に30件以上の武力衝突が起きている。
 イラクに大量破壊兵器があるか調査していた調査団のケイ団長は、公式に発言した。
 私自身を含めて、我々は間違っていた。イラクで大量破壊兵器の備蓄が発見されると考えられる根拠は何もない。過ちを認めることが大切だ。イラクは、あたかも大量破壊兵器を保有しているかのようにふるまっていただけ。
 そうなんです。ことは明白です。アメリカのイラク侵攻に何の根拠もありませんでした。ところが、ブッシュ大統領も日本政府もいまだに自分の誤りを認めていません。ひどい国際法違反です。
 アメリカ政府の高級スタッフがイラクに派遣されて見たものは、次のとおりです。
 イラクは、見た目も雰囲気もまさに戦場だった。攻撃は一ヶ月に1000件。アメリカ軍の食堂が迫撃砲で攻撃を受けたこともあった。ヘリコプターで移動するときには、常にドア銃手が機関銃を下に向けていた。スタッフは抗戦ベストを着用した。
 2004年8月から、攻撃を受けるのは月に3000件になった。
 2003年5月にブッシュ大統領がアメリカ軍の輸送機で到着し、大規模な戦闘は終わったと宣言した時点と比べると、武力衝突は10倍に増えている。
 2005年9月、アメリカ政府の高級スタッフがイラクを視察した。反政府勢力がイラクの大部分で自由に作戦行動できるのに、アメリカ軍は兵力を分散して、手薄になっていることを知った。武装勢力は、従来よりも殺傷性の高いIEDを使用し、それがアメリカ軍将兵多数の死因となっている。
 3年のあいだにイラク人3万人が死んだ。イラクの人口がアメリカの15分の1だということを考えると、この3年間、毎週、9.11同時多発テロの被害者と同数の死者が出ていることになる。9.11が毎週くり返されたら、アメリカの社会にどれほどの心理的打撃を与えるか、想像できる。イラクの社会にもそういう打撃を与えているわけだ。
 いやあ、本当です。この指摘はあたっていると私も思います。
 世論調査によると、スンニー派の50%が反政府運動に賛成している。スンニー派は、人口の20%を占めているので、イラク国民の10%、つまり200万人が武力抗争に賛同していることになる。
 ブッシュは、景気のいい楽天的な発言をするばかりで、イラクの陥っている状況について、アメリカの国民大衆に真実を伝えていない。
 これは、ちょうど安倍首相が貧困層が日本に増大している現実を無視して美しい国・日本を愛しましょうという美辞麗句を並べたてているのと同じことです。

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