弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年1月12日

脳は空より広いか

著者:ジェラルド・M・エーデルマン、出版社:草思社

 1972年に43歳の若さでノーベル医学賞を受賞した学者による本です。人間の意識を科学的に究明しようという本ですので、やはり難しいところが多々あります。私もよくは理解できませんでしたが、なんとなく分かった気もして読みすすめました。
 ひとつだけ、はっきり分かったことは、脳はコンピューターではない、ということです。コンピューターは前もってきっちり決められたプログラムにしたがって入力されたアルゴリズムや効果的なプロシージャーを実行していく。配線に間違いは許されない。
 しかし、脳はあらかじめこと細かに配線が決まっているわけではない。どのニューロンとどのニューロンが結びつくかは統計的に変動する出来事だ。種としては同じパターンを共有しながらも、その個体にしかないネットワークができあがる。普遍的かつ多様だ。
 脳のふるまいはデジタルな計算処理とは考えられない。たとえば、コンピューターにとっては致命的だとされているノイズが、脳の高次機能を働かせるためには不可欠だ。
 スーパーコンピューターをいくら直結しても、それだけでは意識は生まれない。意識とは何か。もちろん、脳なくして意識はない。しかし、それでは、脳や身体のどのような構造や機能が、意識が現れるための必要十分条件なのか。
 意識は、かたちのある物ではなく、流れていく過程である。
 意識とは、脳のさまざまな領域で分散して活動するニューロン群によって、ダイナミックに遂行されるプロセスである。
 意識を生成するのにある領域が必要不可欠だということは、その領域さえあれば意識が生じるという意味ではない。ある瞬間の意識活動に必要だったニューロンが、必ずしも次の瞬間に必要だとは限らない。
 意識は個人のうちにのみ生じる。
 意識は常に変化しながらも連続している。
 意識は志向性をもつ。
 意識は対象のすべての面に向けられるわけではない。
 意識を内面から見ていると、静止することなく、絶えず変化しているように思える。それでいて、その一瞬一瞬は、ひとまとまりだ。この一瞬一瞬を、著者は想起される現在と呼ぶ。
 大脳皮質には、少なくとも300億個のニューロン(神経細胞)が含まれ、シナプスと呼ばれるつなぎ目は、なんと10万×100億個にも達する。仮にシナプスを今から数えはじめ、1秒に1つ数えると、数え終わるのは3200万年後になる。
 意識の発生を理解するのに大脳皮質と並んで重要な構造は視床だ。視床は意識の働きに絶対欠かせない存在だ。
 脳は空より広いのです。そうでしょう。だって、みんな私の頭のなかに入ってしまうのですものね。

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