弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年9月15日

誠実さを貫く経営

著者:? 巌、出版社:日本経済新聞社

 最近の欠陥商品は、例のマンションの強度計算のごまかしと共通していると思います。ソニー、パロマそしてトヨタです。トヨタは経団連の前会長。最近、日本社会に格差が拡大することはいいことだ。活力ある社会になるから。そんなことを言ったそうです。とんでもない人物です。そして、現会長の会社(キャノン)は偽装請負で摘発されてしまいました。金もうけのためには何でもする。安全性なんか二の次。そして、ライトがあたっているところでは建て前を述べ、教育論をぶち上げる。なんだかいやになってきます。
 ルールの抜け穴や隙を、法の網をくぐり抜けることで利益をあげるという経営手法は、知らず知らずのうちに、利益をあげるためにはルール破りもよしとの発想にすすんでいく。理屈は簡単。トップがどこかでルール破りを期待していると部下が感じはじめると、部下は忠実にルール破りをやり始める。東横ホテルがそうでした。このホテルを紹介した本を読んで私も好感を抱き、いつか泊まってみようと思っていた矢先でした。障害者しめ出しのポリシーにまったく幻滅してしまいました。私は絶対にそんなホテルは利用しないつもりです。だって、弱者をいじめて金もうけするなんて最低でしょ。
 会社が大きくなれば、そのように考える部下が次々に増えていき、ついにはみなの感覚が麻痺し、ルール破りができなくて仕事がつとまるかという論理にまで行き着く。
 企業に求められている社会的責任のエッセンスをあげると、誠実さ(インテグリティ)に尽きる。インテグリティの本来の意味は、言うことと行うことが一貫し、そこにぶれがないということ。尊敬(リスペクト)と対話(コミュニケーション)も重要な価値である。
 2002年にスーパー西友は肉の産地偽装があったことを自ら公表し、返金すると発表した。ところが、それを悪用した人間が多くいた。西友のレシートをもってレジの前に並んだのだ。それでも、西友は、列の中に1人でも一般のお客様がいたら、最後まで返金を続けるよう指示した。うーん、たいしたものですね・・・。
 NHKのプロジェクトXがなぜ評価されたのか。それは、プロジェクトXが、無心に手を抜かず誠実に事に臨めば、情熱をもってまじめに事にあたれば、いつかは必ず成就するということを主題としていたからである。
 日本ハムは2002年8月、補助金の不正受給が発覚した。事件のあと就任した藤井社長は、「日本で一番誠実な会社を」という名刺サイズのスローガンを胸につけて働くことにした。これは並大抵のスローガンではありません。実際、日本ハムはこのあと何度もマスコミから叩かれました。それでもスローガンをおろさなかったのです。うーむ、やはり信念をもつのは大切なことですよね。

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