弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年9月12日

ジェーン・フォンダ、わが半生(下)

著者:ジェーン・フォンダ、出版社:ソニー・マガジン
 ジェーン・フォンダはベトナム戦争の真最中にベトナムに行きました。そして、北爆を受けたベトナムで少女からこんなことを言われたのです。
 私たちのために泣くことはありません。私たちはなぜ自分たちが戦っているのかを知っていますから。あなたの国、あなたの国の兵隊さんたちのために泣いてあげてください。その人たちは、なぜ戦うのかも知らないで私たちと戦わされているのですから。
 そして、別の男性役者はこう言いました。
 私たちのような小国は、アメリカ人を憎んではやっていけません。いつか戦争が終われば、私たちは友人にならなければなりません。
 ジェーン・フォンダは、少女の言葉でハッと気がつきました。この戦いは、彼らの問題ではなく、私たちの問題ではないのか、と。戦うのは簡単なのだ。だけど、平和を守るのは、戦うより難しいこと。
 ベトナム戦争では5万8000人のアメリカ人(そのほとんどは私と同世代の前途有為な青年でした)と100万人のベトナム人の生命が犠牲になった。いま、アメリカはベトナムに10億ドル以上の投資をしている。アメリカとベトナムの貿易総額は60億ドルに達し、アメリカはベトナムにとって最大の輸出市場になっている。2003年秋ベトナムの国防大臣はペンタゴンの歓迎式典で最大の敬意を払って迎えられた。ベトナムは観光でもビジネスでも、もっとも安全な国のひとつと見なされている。変われば変わるものですね・・・。私も、ぜひ一度はベトナムに行ってみたいと考えています。
 ジェーン・フォンダはベトナム反戦運動に身を入れ、とかくの批判を浴びましたが、女優としては、実は、それまで以上に花開いたのでした。そして、ジェーン・フォンダはホームビデオの世界に乗り出し、大成功をおさめたのです。実は、わが家にもビデオがありました。ジェーン・フォンダのエクササイズです。本を5冊、ビデオテープを23本もつくったというのですから、たいしたものです。1本のビデオを5日間で撮影しました。ただし、その準備には6ヶ月から1年かけたそうですが・・・。
 ジェーン・フォンダは自分が浮気をしていたことを次のように告白します。
 私の摂食障害は完璧という不可能を求めていたことの裏返しで、食べ物を体に「入れる」ことで自分の中の空虚を埋めようとしていた。過食して吐くという行為は止めても、私自身は変わっていなかった。自分の体と本気で向きあい、自分の心を包んでしまった偽りのコントロールという頑丈な容器を打ち壊さなければならなかった。
 私は食べ物の代わりにセックスに逃げ場を求めた。浮気をしたのだ。それはすばらしかったが、同時に心の傷になって残るような経験だった。いつか、この背信の報いを受けるだろうという不安に絶えずつきまとわれながら、そのくせ心地よい解放感も感じていた。ただ楽しむために誰かと一緒にいる。妻でいなくてもいい相手と一緒にいることは、私のなかのずっと死んでいた部分を生き返らせてくれた。なんという大胆な告白でしょうか。
 ジェーン・フォンダは45もの映画に出演した。本当に満足のいく演技のできた作品は、そのうち8〜9作しかない。今日は、おまえが分不相応なギャラをふんだくる詐欺師だったことがバレる日だという悪魔の声に絶えず脅えていたそうです。うむむ・・・。
 グレゴリー・ペッグが一日中くり返し練習している様子も見たといいます。役者としてのアイデンティティは、すべて周囲で用意してくれ、その日のシーンで何を考え、何を感じ、そして言う言葉まで渡される台本が教えてくれる。役者の責任は演じる人物の感覚や言葉に命を吹きこむことの一点に絞られる。これこそが難しい。だからこそ役者は、これに対して報酬が支払われる。
 役者は他者を感じ理解するために、他者の気持ちになることを要求され、この他者の目を通して物事を見ることが俳優に同情という感情を与える。芸術家が独裁者を嫌悪し、愛国者を装った独裁者にガマンできないのは、このためではないか。
 芸術家は人の心がもつ多様性を愛するが、独裁者はそれを忌み嫌う。
 私の言う親密さとは、セックスのことだけではない。セックスも親密さのひとつではある。だが、親密さのすべてではない。ときとしてセックスは快楽を目的とした単なる性器の刺激である。私の言う親密さとは、二人の人間が心を通わせあうことであり、互いに明らかな欠点があろうとも、心を大きく開いて向きあうことである。
 心を開けば人は傷つきやすくなる。だからこそ信頼が大切になる。また、自分を愛することも大切である。自分を愛せなければ、誰かと心を開きあって真に親密な関係になることなどできない。
 私は、相手が求めるとおりの女になっていた。セクシーな若い女であり、物議をかもす生活家、そして大実業家に寄り添う貞淑な妻だった。間違ってはいけない。女が男を選ぶ。男が女を選ぶんじゃない。私も、本当にそう思います。
 ジェーン・フォンダが豊胸手術をしていたというのでビックリしました。そんな必要はなかったでしょうに・・・。ところが、そのインプラントをとる手術を受けたのです。そのときの女医さんは、こう言いました。
 女性は、ある年齢になって、本当の自我が育ち、自分をもう外見で判断しなくてもよくなると、インプラントを取りたいと思うことが珍しくない。
 ここまで確固たる自己分析をされると、さすがです。心から拍手を送りたくなります。
 男性遍歴の数々がことこまかに描かれていて、そこらの小説を超えてしまいます。事実は小説より奇なり、なんていう言葉は今となっては古めかしすぎますね・・・。人生とは何かを考えたい人に一読をおすすめします。

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