弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年9月 8日

最後の狩人

著者:ニコラ・ヴァニエ、出版社:小峰書店
 お盆休みに、福岡の小さな映画館で、この映画をみました。カナダのロッキー山脈の雄大な大自然がよく描かれています。
 実在の罠猟師がそのまま主人公で出てくる映画です。彼が、木がどんどん伐採されて森に木がなくなりつつある、動物たちも減少していると嘆いているのをみて、森林とそこに棲む動物たちがいなくなったら、人間の将来もないなと思わざるをえませんでした。
 テレビにもラジオにも縁のない、森の中での生活です。エスキモーの妻が留守を守り、犬たちと一緒に狩りに出ます。犬ぞりに乗って・・・。
 スノーモービルだと故障したら、もうどうしようもない。しかし、犬は故障しない。
 シベリアン・ハスキーが森の中で生き生きと活躍し、素敵です。暑くて自然に乏しい町のなかで生活するような犬ではないのですよね。
 凍った湖を犬ぞりで走行中に割れた氷のなかにおぼれるという実体験が、映画のなかで再現されています。スノーモービルなら氷中に落っこちたら、とても助からなかったことでしょう。でも、犬たちに呼びかけていたら、引き返してくれたのです。そこは日頃の付きあいのたまものでした。
 主人公はいつも犬に話しかけ、ほめる。犬との付きあいの基本はほめること。そうやって心を通じていないと、いざというときに、いうことをきかない。
 冬は氷点下40度の世界だから、氷中に落ちたとき、たとえはいあがれたとしてもマッチやライターが濡れていると、火はなかなかつかない。かじかんだ手もいうことをきかず、火をおこせない。凍死の危機が迫る。映画では犬の身体で手指のしびれをなくしてマッチをこすることができました。彼らは、こんな事態にそなえて、ワックスで防水したマッチを常にオーバーやシャツの襟に何本か縫いこんでいるというのです。
 極北の地では体力と知力を総動員しないと生きていけない。これをフルライフという。一度フルライフを経験したら、快適な都市生活は安易に過ぎて退屈なのかもしれない。
 オオカミは犬を襲う。しかし、近くに人間がいると襲わない。オオカミは物語と違って人間を襲わない。初めて知りました。
 犬ぞりでシベリアを3ヶ月かけて8000キロ走破したという冒険家が監督した、大自然の素晴らしさを描いた映画です。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー