弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年8月11日

木槿の咲く庭

著者:リンダ・スー・パーク、出版社:新潮社
 日本統治下の朝鮮で生き抜いていこうとする兄と妹の物語です。1940年から45年までの5年間の彼らの生活が生き生きと描かれ、日本人として切ない思いにかられます。
 そこで理不尽な圧制者として登場するのは、なにより日本人であり、日本軍人なのです。 朝鮮の慣習では、祖父が赤ん坊に命名することになっている。これって、今も続いているのでしょうか。今の日本では、子どもの命名は、若い両親が姓名判断の本をみたり、自然な英語読みになるようにしたものが多いように思いますが、いかがでしょうか。
 兄妹は創始改名を余儀なくされます。強制ではなく、自発的な行為だと今も主張する日本の人々がいますが、民族の誇りを無視するとんでもない思いあがりの主張だと思います。
 食事のときは、食べることに集中する。これもまた、朝鮮の昔からの作法のひとつだ。うーん、食事のときって、にぎやかにおしゃべりしながらの方が美味しくいただけると思うんですが・・・。
 抗日運動にいそしむ人々が出てきます。いわゆる地下にもぐり、それを助ける人々がいます。民族の誇りを奪ったら、それに反発する人々が出てくるのは当然のことです。
 金属や宝石類は根こそぎ供出させられます。燃料の確保、そしてぜいたくは敵だとして、国家があって国民のいない国づくりに邁進していきます。
 日本軍の神風特攻隊に朝鮮人兵士も志願します。勇気がないなんて馬鹿にされないためです。なかには、日本軍を同士討ちにしてやろうと目論んだ特攻隊の兵士もいました。それでも、アメリカ軍の弾幕の前に無駄死にを重ねるばかりでした。
 第二次大戦中を生き抜いた兄と妹は、朝鮮戦争をふくむ戦後の朝鮮・韓国をどう生きのびていったのでしょうか。気になるところです。

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