弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年8月 8日

変化する社会の不平等

著者:白波瀬佐和子、出版社:東京大学出版会
 先日受けたフランス語の口頭試問のテーマは、勝ち組と負け組という最近の現象についてどう考えるか、ということでした。これを3分間でスピーチするのです。日本語でも何と言っていいかよく分かりませんが、フランス語だったら、ましてや手に負えない難問です。
 人々は物事を否定しようとしない巧妙さをどこかでもっている。既存の体制を根底から破壊し、新たな体制へと転換させよう、などという気構えはあまりない。恵まれない環境で育ち、どうがんばっても不当な評価しかうけない。そんな時でも、かれらは怒りをストレートに発しようとしない。不透明な世の中で、彼らはあきらめと妥協が奇妙にブレンドされて、現状を受け入れる。しかし、現実を受け入れることは、現実を直視することと必ずしも一致しない。物事を直視することを逃れ、複雑な物事を解明しようとすることから目を背けようとする。その回避が、簡単に諦めて現実を肯定しようとすることになる。
 なかなか鋭い指摘だと思います。なるほど、ですよね。
 格差が問題になるのは、格差が単なる差、違いではなく、その違いによって発生する社会的、経済的な優位性・劣位性が介在するからである。これは所得の高低にとどまらず、威信や名誉を含む社会的地位を決定し、人々の実質的な生活水準を決定する。
 所得格差の程度をあらわす代表的な指標がジニ係数である。ジニ係数が小さいほど所得分布は平等であり、1に近ければ不平等であることを示す。
 男性の生涯未婚率は1995年の8.99から2000年の12.57へと大きく上昇した。女性も生涯未婚率は恒常的に上昇しているが、男性ほど大きな変化ではない。
 2001年時点で、50代の男性一人暮らしの過半数は未婚者である。かつて離別者の占める割合が4割以上だったが、2001年には離別者は3分の1に減り、未婚者が過半数となった。同じく50代単身女性の離別者割合は1986年の23.4%から、2001年の46.7%へ、2倍にも増えた。現在、静かに、しかし確実に増えつつあるのは、仕事をしていない独身の中年層なのである。
 1990年代以降、若年無業だけでなく、中年齢層の独身無業者がふえつつある。
 2002年で89万人にのぼる。そのうち49万人は、働くことを希望していながら職探しをしていない「非求職型」、もしくは働く希望を表明していない「非希望型」である。
 また、中年無業者の4人に1人は過去に一切の就業経験をもっていない。それは病気やケガをかかえているから。したがって、健康や医療面での対応も考えなければいけない。
 団塊の世代の一人として、なかなか考えさせられるデータです。正直いって、どう考えたらよいのか見当がつきません。でも、たしかに50代の人で病気やケガのため働けないという人が多いのは実感します。精神病院に入通院している人が、私のクライアントにも何人もいます。
 相続税の対象は死亡件数の5%ほど。残念ながら、私の父もその一人でした。相続税をおさめた人々を分析してみると、課税価格10億円超は金額で16.8%、5億円超10億円未満16.9%(6.0%)、1億円超5億円未満59.7%(73.0%)、1億円未満6.7%(18.7%)となっている。
 相続税の税率を下げろという意見も強いのですが、必ずしも賛成できないのはこんな事情もあるからです。やはり、できるだけ平等になるためには相続税率はかなり高くても仕方がないように思います。いかがでしょうか・・・。
 暑いなか草むしりをしていると,脱皮したヘビの白い抜け殻が出てきました。先日見かけたヘビは若くて元気が良かったので,きっと脱皮したばかりだったのでしょう。水不足のせいか,キウイの雄木がしぼんでいました。キウイは雄木と雌木があります。わが家の雄木は実は5代目です。雌木の方は盛んに繁っているのですが,雄木の方は人間の男性と同じで,ひ弱なのです。たっぷり水をまきましたので,生きのびてくれるとうれしいのですが・・・。

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