弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年7月21日

日曜日ピアジェ、赤ちゃん学のすすめ

著者:開 一夫、出版社:岩波科学ライブラリー
 わが家に赤ちゃんがいないのがとても残念に思えます。昔は身近にいたのですが・・・。孫も果たしてできるのやら、という状況ですので、残念でたまりません。
 というのも、この本には赤ちゃんをめぐる楽しい実験がいくつも紹介されているからです。ぜひやってみたいと思っているのですが・・・。さし絵がまた、とてもいいのです。いかにも愛くるしい赤ちゃんそのものです。
 たとえば、赤ちゃんにベロ(舌)を出してみせます。普通の顔とベロを出すのと交互にくり返して見せます。赤ちゃんはいったいどんな反応をするでしょうか。
 赤ちゃんは、大人のように自分のベロを出してくれるのです。あたりまえのようですが、これって単なる反射行動ではないのです。鏡も見ないで、相手の動作と同じ行動ができるというのが、実はすごいことなんです。うーん、そうなのか・・・。
 次の実験は、まず初めの1分間は笑顔で赤ちゃんに話しかけます。次の1分間は静止顔です。声は出さずに、じっと赤ちゃんの顔を見つづけるのです。怒った顔でも悲しい顔でもなく、あくまで普通の顔です。そして、最後の1分間で、笑顔になって話しかけます。
 さあ、途中の静止顔に赤ちゃんはどう反応するでしょうか。
 赤ちゃんは静止顔を見たくないため、顔をそむけたり、むずがったりするそうです。これは赤ちゃんにはコミュニケーション能力があることを意味します。うーん、本当でしょうか。たしかめてみたいものです。この赤ちゃんは、生後2ヶ月から8ヶ月くらいまでです。
 次の実験は結果が意外でした。対象の赤ちゃんは生後9ヶ月から12ヶ月です。赤ちゃんの前にハンカチを2枚、別々に置いておきます。少し中央にふくらみをもたせます。そして、どちらかのハンカチの下におもちゃを隠すのです。赤ちゃんがハンカチを取ってオモチャを手にしたら、ほめてあげます。そこで、実験です。今度は別のハンカチの下におもちゃを隠します。赤ちゃんの見ている前で隠すのです。
 さあ、赤ちゃんはどちらのハンカチを取るでしょうか・・・。なあーんだ、そんなのあたりまえじゃないか。おもちゃを隠した方のハンカチを取るに決まっているだろ。見てたんだから・・・。
 ところが、ところが、赤ちゃんは最初に隠したハンカチを取るというのです。えーっ、ウッソー、ウソでしょ。そう叫びたくなります。学者が何度も追試したそうですが、結果は変わりませんでした。これについては、赤ちゃんにとって、対象は見えていなくても存在しつづけるという対象の永続性概念をもっていないからだと説明されています。つまり、対象が見えなくなることは、もうそこには存在しないと赤ちゃんは考えるのです。それにしても不思議ですよね。
 3歳ころまでの赤ちゃんの記憶は人間誰でも思い出すことができません。つまり、3歳児までの赤ちゃんは、それ以上の年齢の人間とは違った存在なのです。そこに赤ちゃん学が存在する根拠があります。うーん、人間って奥の深い存在なんだ・・・。

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