弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年6月13日

市長、お覚悟召されい

著者:ポンポン山ゴルフ場買収疑惑追及市民の会、出版社:かもがわ出版
 住民訴訟で元市長に47億円を支払えという判決を最高裁で確定させた京都市民の素晴らしいたたかいを紹介しています。市長個人に47億円の賠償を命じても、とても現実的ではないでしょう。しかし、一罰百戒の大きな効果はあります。そして、市長の無法を許した京都市議会の多数派の議員についても厳しい審判が下ったと思われます。
 ところが、この本を読むと、実は、さらにまだまだ奥深い謎があって、それは未解明のままだというのです。何のことか・・・。なんと京都市が支払った47億円がどこに消えたのかが分からないというのです。ええーっ・・・と、のけぞってしまいました。
 どうやら金丸信に30億円、そして小泉純一郎の政争で負けてしまった野中広務に、それぞれ消えてしまったようなのです。うむむ、日本の闇は底深いものがある。改めて、そのことを痛感させられました。
 京都と大阪の境に位置する里山にゴルフ場建設計画がもちあがったのは1990年1月のこと。それに反対する市民運動が起き、ポンポン山ゴルフ場をつくることに反対する市民は駅頭でビラまきをした。一人一人に声をかけて配ります。
 「読んでくれはりますか。このビラ一枚5円かかっているんです」
 アキ瓶1本を酒屋に運んでもらえるのが5円。苦労してつくったビラを駅のゴミ箱に捨てられてはイヤなのです。その思いはしっかり京都市民に伝わっていきました。そして、その甲斐あって、ゴルフ場建設計画はつぶれてしまったのです。京都市は建設不許可決定を出しました。ところが、京都市当局は、「企業の存続を危うくすることにもつながりかねない」として、47億円もの高値で買収することにしたのです。当初は反対していた京都市議会もある日、一転して共産党を除いて同意してしまいました。なぜか・・・。
 共産党の市会議員が市議会で市長を追及したときのセリフが、この本のタイトルになっています。
 市長、あなたの答弁を聞いておりますと、蟻地獄の蟻がもがけばもがくほど深みにはまっていく、そういう姿を連想します。・・・市長、お覚悟召されい。
 京都市は、その企業が20億円で買ったのに、それより27億円も高い、47億円の補助金を支払ったというわけです。信じられないデタラメさです。それを自民党も民主党も共産党を除くオール与党が承認したというのですから、開いた口がふさがりません。なんのための議会なのでしょうか・・・。
 澤野順産・不動産鑑定士(横浜)の評価によると、14億円にもならないというのです。この件で、京都選出の代議士に5000万円、市議に300万円のお金が流れたというタレコミもあったそうです。さもありなんと思います。
 京都市と企業側で調停がありました。この企業側の代理人となった弁護士は金丸信の選挙区である山梨県の弁護士でした。うむむ、なんだか臭ってくるぞ・・・。そして、京都市が47億円を振りこんで支払った先の企業は、1回も法人所得税の申告をしないまま解散してしまいました。
 京都市が47億円を振り込んだ日は、1992年7月8日。これは参院選の公示日。受けとった企業が解散したのは、1993年2月のこと。いったい、47億円もの税金はどこに消えたのか。
 1993年3月6日、金丸信の自宅などが東京地検特捜部によって捜索された。このとき、債券50億円をはじめ、現金をふくめて60億円が押収されている。では、このなかに入ってしまったのでしょうか・・・。
 京都市長だった田辺氏は2002年に死亡。ところが、その助役だった佐藤達三氏は、その後、福岡県の部長に転職しているというのです。許せませんよね。
 私も、ずっと住民訴訟にかかわっていますが、裁判所の冷たい壁を乗りこえることができないで、本当に残念です。行政の過ちを正す使命を忘れた裁判官があまりに多いという気がしてなりません。生活保護の不正受給で何万円かをごまかしたりすると、すぐに逮捕されたりするのに、何十億円という巨額のお金が消えてしまっても、誰も、何の責任を問われないというのです。ほんとに、おかしな話です。

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