弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年6月 9日

戦場の犬たち

著者:河村喜代子、出版社:ワールド・フォトプレス
 戦場で働く犬たちの写真集です。かわいい犬。味方にとっては頼もしい存在。しかし、敵にまわしたら、小憎たらしい存在でしかない。
 戦場でいち早く軍用犬としてつかいはじめたのは第一次大戦時のドイツ軍。フランス軍では少しだけ。イギリス軍とアメリカ軍は遅れをとった。
 アメリカ軍が犬を本格的に戦場へ連れ出したのは第二次大戦のとき。はじめは民間のボランティアに頼った。30種、1万9000匹も志願してきた。身体検査を受けて合格した犬は55%。あとで5犬種にしぼられた。ジャーマン・シェパード、ベルジャン・シープドッグ、ドーベルマンピンシェル、コリー、ジャイアント・シュナウザー。
 シェパードとドーベルマンとコリーの3犬種は私にも分かりますが、あと2犬種は聞いたことがありません。グアムに上陸した海兵隊は72匹の犬を連れていった。
 訓練を受けた犬は、1万425匹のうち8300匹は歩哨犬になった。また、3174匹が海兵隊へ引き渡された。偵察犬は900メートル離れた敵の存在も察知した。伝令犬には忠誠心のある犬が選ばれた。地雷犬は金属と非金属の地雷を見つけ、地雷につながるワイヤーを探した。しかし、あとでロボットに代わった。
 戦争が終わると、兵士たちは故郷に帰る。民間出身の犬は訓練解除訓練を経ないと民間には戻れなかった。軍隊で身につけた行動スタイルを捨て、安全な犬に戻るための訓練である。ところが、軍にとって、そんなことは面倒そのもの。たかが犬ではないか。うーん、そう言っても、戦場でいわば兵器の一部となってしまった軍用犬を平和な町のなかに野放したら、どんなことが起きるか分からないでしょう・・・。
 ベトナム戦争に従軍した犬4000匹のうち、戦死281匹、本国に帰還したのは、わずか200匹足らずでしかない。残りの犬は病気になったり、置き去りにされ、そのうち毒物を注射されて殺されたのです。
 戦場の犬の写真を通して、そこにおかれた兵士たちの苛酷な状況を想像することのできる写真集でもあります。

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