弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年5月12日

ジプシー・ミュージックの真実

著者:関口義人、出版社:青土社
 インドの音楽には楽譜から音楽を再生する習慣はない。音楽は耳と身体で体得するもの。楽譜らしきものはあるが、それは記憶の一助になるにすぎない。楽譜を完全に習得しても、音楽を再現することはできない。あくまで口頭伝承によって受け継がれている。
 ジプシーではなくロマと呼ぶべきだという意見があるが、必ずしも彼らの総意ではない。 ジプシーは現在、世界におよそ1000〜1200万人は存在する。
 ロマの住む集落には、いろいろなタイプやサイズがある。20〜30人という、ごく小規模なものから、最大で5万人ほどにふくれあがった集落まで、さまざま。ロマの居住地は1万5000前後もある。定住せず、今も馬車などで移動し続けているロマは、全体からみて2〜3%にすぎない。漂流するジプシーというのは既に過去のものとなりつつある。 ヨーロッパのロマ人口は800万人。なかでもブルガリアは世界で3番目のロマ集積国。人口比で9.4%。スリヴェンはバルカン最大のロマの集中居住地。スリヴェンの人口15万人のうち、ロマは6万人、40%を占める。
 現在までの長い歴史のなかで、どの時期をとっても、ロマがもっとも多く居留したのはルーマニア。ルーマニアの南部にはロマ御殿が立ち並んでいる。インド以来、移動に適した資産として、ロマは金銀そして宝飾品を携える文化があった。
 人口200万人のマケドニアに居住するロマは25万人ほど。人口比率は12%に及ぶ。
 現在、ヨーロッパだけでも、電気も水もない場所で暮らすロマは200万人を下らない。そこに数ヶ月、いや10年以上も住む。
 ロマの少女は、14〜16歳で結婚してしまう。18歳の母親が3人の子どもを育てるというのは日常茶飯事。7、8人が狭い一部屋に暮らすのは珍しいことではない。したがって、家族の前で性関係が結ばれる。夫婦による性交渉が幼い子どもたちの眼前で行われ、子どもたちもほどなく同じことをくり返す。ロマたちは、平均3〜5人の子どもをもつ。ロマ社会では内婚制が現在もかなり守られている。
 本来、ロマは大変穏やかで、平和を好む人々である。しかし、集落における暮らしがストレスを生んでいる。
 ロマは、本来、宗教をもたないので、不信仰の輩と排斥された。
 暮から暮らしをするジプシー、政治・言論などで活躍するジプシーも多数いる。
 ジプシーの豊かな芸術的才能と生活の一端を知ることができました。日本人が、ここまでジプシーの生活に入りこんで体験的に調べること自体にも感心してしまいました。

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