弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年5月12日

近世の女旅日記事典

著者:柴 桂子、出版社:東京堂出版
 江戸時代の女性が日本各地を旅行したときの日記が、こんなにたくさんあること自体に私は感動してしまいました。すごいものです。
 「入り鉄砲に出女」と呼ばれたように、江戸時代は、武器の江戸への流入と諸大名の妻女の江戸からの脱出を厳しく取調べたことは有名です。このイメージが強いものですから、女性が旅行するなんて考えられないことです。しかし、この本を読むと、とんでもない。江戸だけでなく、東北でも九州でも、たくさんの女性が日本各地を自由気ままに旅行していました。なかには一人旅を楽しむ女性すらいたのです。そうそう。そうなんです。日本の女性が昔から弱かったはずはありませんよ。長く弁護士をしていて、私はつくづくそう思います。
 たしかに、女手形があり、きびしい女改めはありました。しかし、同時に関所抜けも公然たるものでした。抜け道の案内賃として100文を払えばよかったのです。宿屋で案内人を斡旋してもらい、夜のうちに垣根や塀などの穴をくぐって関所抜けするのです。関所で手形をもたずに通れなかった女性は、茶屋の亭主に頼み、役人に50文の袖の下をつかって通過しています。
 昔は女人禁制の山が、あちこちにありました。富士山も通常は女人禁制。しかし、僧に導かれて頂上まで登った女性もいました。
 道中の食事はあまりおいしいものではなかったようです。でも、伊勢神宮のときには、桁はずれのご馳走でした。鯛も鮑もつき、酒と肴がふるまわれました。
 女性の一人旅も珍しいことではありませんでした。しかも、女盛りの41歳の女性一人旅です。各地の俳諧仲間を訪ねて歩いた山口県(長門)の女性(田上菊舎)がいます。
 旅の目的はさまざまです。人質、国替という公式のものから、吟行、湯治、観光、そして参詣、巡礼などの私的なものまで、いろいろあります。
 今も昔も、日本女性の旅行好きは変わらないことが、この本を読んで改めて実感することができます。うちのわがまま娘も、定職に就かないまま、気ままな世界旅行を夢見ています。これまでにも、さんざん海外旅行しているのに・・・。

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