弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年4月13日

ビッグ・ファーム

著者:マーシャ・エンジェル、出版社:篠原出版新社
 製薬会社は、薬が一番必要で、しかも薬代を支払う余裕のない人たちに対して、他の人たちよりも薬価を高く設定している。20年以上ものあいだ、製薬業はずっとアメリカでもっとも収益性の高い業種であった。2003年には、鉱業・原油生産業、商業銀行業に次いで第3位となったが・・・。
 1960年から1980年までは処方薬の売上はGDPの1%で、ほぼ一定していた。ところが、1980年から2000年の間に、3倍となり、今や1年間の売り上げは  2000億ドル以上だ。2002年の全世界の処方薬の売上高は4000億ドルと推定されているので、半分を占めていることになる。
 1980年にはブランド薬の特許の有効期間は8年間だったが、2000年には14年間となった。
 製薬会社は経営者に手厚い業界でもある。役員報酬は、桁外れに大きく、年収7500万ドルとか4000万ドルであるが、このほかにストック・オプションによって7600万ドルとか4000万ドルがもらえることになっている。
 カナダの方が薬が安いため、アメリカ人の200万人近くが、インターネットを通じてカナダのドラッグストアから買っている。また、カナダへ薬を買いに行くツァーもある。製薬会社の売上げの31%(670億ドル)がマーケティング・運営管理費としてつかわれている。
 薬ビジネスで成功するには、その薬の市場がお金の払える客で成り立っていることが大切。金を払えない客のために薬をつくってもペイはしない。製薬会社がマラリア、睡眠病のような熱帯病の薬を開発することにまったく興味がないのは、それが理由。
 昔は、製薬会社は、病気の治療のために薬を開発していた。今は、その反対が見られることも少なくない。薬にあわせて、都合よく病気をつくりだしている。
 臨床試験の結果を歪めるのによく使われる手口として、データの結果の都合のよい部分だけを見せ、その他の部分は隠すという方法がとられる。
 ほとんどの「新薬」は、少しも新しいものではない。単に既に市販されている薬の焼き直しに過ぎない。これをゾロ新薬という。製薬会社は、年間薬110億ドルのサンプルを医師たちに渡している。そのほとんどが最新の高価なゾロ新薬である。製薬会社は患者や医師にサンプルを使わせれば、サンプルが切れた後も、その薬を使ってもらえるから無料で渡している。もちろん、サンプルが無料のはずがなく、そのコストは薬の値段にはね返っている。
 私は、司法試験に合格したあと、小さなセツルメント診療所の受付事務のアルバイトをしばらくしていました。そのとき、サンプルが流れこんで来るのを目撃しました。
 深刻なのは、多くの薬を一度に服用するケースが増えていること。5剤、10剤、それ以上の薬を一度に飲むことがある。このような多剤投与は実に危険である。副作用がある。服用する薬の種類が多ければ多いほど、いずれかの薬がいずれかの臓器の正常な機能を損なう可能性も高い。
 私は年間を通じて薬を飲むことはまったくありません。目薬はさしますが・・・。風邪をひいたら玉子酒を飲んで、いつもより早めに布団に入って寝るようにしています。薬は身体にとっての毒ではないかと考えています。笑いの力によって自己の免疫力を高めるという説に大いに共鳴し、実践しています。
 製薬業界はワシントンにある138ヶ所の事務所の675人のロビイストをつかい、その費用に9,100万ドルをつかっている。ロビイストのうちの26人が元議員であり、342人が議会スタッフ経験者か政府要人と親しい関係にあった。
 製薬業界は巨額の政治献金をしている。80%が共和党に入っている。
 日本でも「くすり九層倍」と昔から言われるように製薬会社は大もうけしていて、自民党政治を支えているように思います。

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