弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年2月 9日

ぼくは13歳。職業、兵士

著者:鬼丸昌也、出版社:合同出版
 恐るべき本です。世の中に、こんなに重く辛い現実があるなんて・・・。ホラー映画なんて、そんなもの目じゃありません。背筋に氷をずっとずっと注ぎこまれて止まらない。そんな冷え冷えとした状況が世界いたるところにあるというのです。そして、日本という国もそれに一役買っているのです。いえ、もっと大胆に乗り出そうというのが小泉・自民党です。
 この本を読んで、私がもっともショックを受けたのは、ウガンダのナイトコミューターの話です。ナイトコミューターというのは夜の通勤者のこと。大人のことか?いえ。夜の女性のことか?それも違います。なんと、夜になると都会周辺の村々から子どもたちが4000人とか
6000人も、市の中心部へ向かい、眠りに来るのです。なぜ?「神の抵抗軍」が村を襲い、子どもたちを連れ去って子ども兵士に仕立てあげるのから逃れるためです。村では子どもたちは安心して夜に眠れないのです。
 早朝、数千人の子どもたちは、一斉に自分の村へ帰っていきます。10キロも離れた村へ、です。10歳以上の子どもたちが素足で毎日毎晩、往復するのです。これが、もう 20年近くも続いているというのですから、大変なことです。とても信じられません。
 「神の抵抗軍」と呼ばれるウガンダの反政府軍に拉致された子どもの数は2万人以上にものぼる。それは「神の抵抗軍」を構成する3分の1にもなる。そして、「神の抵抗軍」の3分の2は17歳以下の子ども兵士だといいます。子ども兵士は自分の出身の部落で残虐な殺人などを命じられ、自分の出身地には戻れなくされてしまいます。
 子ども兵士が救出されても、その子には顔から表情が消え、目の焦点が定まっていない、じっと遠くを見つめるのみ、鋭い目つきでにらみつける・・・、というロウ人形のような表情です。
 アフガニスタンでは、10歳をふくめて総数12万近くの子ども兵士がいて、全兵力の45%を占めている。
 現在、小型武器の輸出額は、アメリカが1位、2位はイタリアで、3位ベルギー、4位ドイツとなっている。日本は猟銃などを輸出していて、輸出額は世界第9位。
 アメリカ、イギリス、フランスの3ヶ国が武器貿易によって得ている利益はODAの額よりも大きい。人助けより、人殺しの方でもうけているのですね、この文明国は・・・。
 このくだりを読んで、先日みたニコラス・ケイジ主演の映画「戦争商人」を思い出しました。アメリカの青年がアフリカなど、武力紛争の起きている国へ武器を売りこみに行き、もうけている実際をよくイメージすることができました。戦争はそれでもうかる人間がいるから起きるのだということがよく分かる映画でした。
 子ども兵士だった子どもたちに笑顔を取り戻させる地道な取り組みがすすんでいることも知り、少し救われる思いがしました。日本政府は、この方面にもっと力を入れるべきです。いい本をつくっていただき、ありがとうございました。

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