弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年1月23日

植物という不思議な生き方

著者:蓮実香佑、出版社:PHP研究所
 冬のわが庭は手入れの時期です。庭のあちらこちらを掘り返しては春に備えています。いま花が咲いているのはロウバイくらいのものです。その名のとおりロウそのものといった黄色い小さな花が枯れ葉に見え隠れしています。香りロウバイというのですが、私の鼻が利かないのか、残念なことに、あまり匂ひはしません。昨年はアガパンサスの青紫の素敵な花が少ししか咲きませんでした。今年はもっと花を増やしたいと思って株分けをしてみました。うまくいくことを念じています。
 水仙の茎がぐんぐん伸びてきました。あまりに増えすぎたので、心を鬼にして半分ほど始末してしまいました。やはり、庭にはいろいろの花を四季折々に咲かせたいので、仕方ありません。
 サボテンの子どもたちがたくさん増えていましたので、こちらは始末するのはさすがに忍びがたいので、小さなポット苗を30個ほどもつくって、知人にわけてやりました。わが庭のサボテンは、もう少くなくとも3代目です。両手をあわせて輪をつくったくらいの大きさになると、白い花を咲かせ、たくさんの子どもサボテンを自分の周囲につくって、親(本体)は、そのうちスカスカになって枯れてしまうのです。
 ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサという毒草を餌にしている。ウマノスズクサの毒は、虫の食害から身を守るためのもの。ところが、ジャコウアゲハの幼虫は平気でウマノスズクサをたいらげる。それどころか、ジャコウアゲハの幼虫は、毒を分解するのではなく、ウマノスズクサの毒を体内に蓄えてしまう。こうしてジャコウアゲハは毒を手に入れた。こうなると、鳥はジャコウアゲハの幼虫には手が出せない。
 多くのハチが中空にぶらさがった巣をつくる理由は、アリに襲われるのを恐れてのこと。ハチの巣の付け根には、アリの忌避物質が塗られている。
 コガネムシは、花粉を媒介する昆虫の中で、もっとも古いタイプの昆虫だ。
 昆虫界で紫色を好むのは、ミツバチなどのハナバチの仲間。アゲハチョウは情熱の赤色を好む。そのためチョウをパートナーに選んだ花たちは赤色や橙色をしている。ユリやツツジの花がそうだ。
 日本でイチョウの木はありふれているが、実は、欧米ではほとんど見ることのできない木だ。銀杏は美味しいけれど、臭いですよね。
 古代ギリシアの学者アリストテレスは、植物とは逆立ちした人間であると評した。人間の口に相当する根が一番下にあり、胴体に相当する茎がその上にある。そして、人間の下半身にある生殖器が、植物の一番上にあう花だということ。
 一方、プラトンは、人間とは逆立ちした植物であると言った。人間には神様に与えられた理性がある。だから、理性をつかさどる頭が天上の神に近い一番上にある。つまり、植物が大地に根ざした存在だとすれば、人間は天に根ざした存在なのだ。
 この本は、何もモノ言わない植物が実は、いかに賢い存在であるか、よく分からせてくれます。自然界って、ホント、奥が深いですよね。

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