弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月26日

プリズン・ガール

著者:有村朋美、出版社:ポプラ社
 24歳の日本人女性が日本脱出。ニューヨークで知りあったのがロシアン・マフィア。恋人としてつきあっていたら、ドラッグ密売組織に関係したとして懲役2年の実刑。そして連邦刑務所で22ヶ月すごしたという恐ろしい体験記です。
 フワフワした日本人の若い女の子が、カッコいい白人男性にうまく騙されてしまったという、よくある定番の話なんですが、22ヶ月の連邦刑務所の体験記が明るくサラッと描かれていますので、最後までさっと苦もなく読み通すことができます。そして、連邦刑務所の「自由な」生活ぶりに、日本の刑務所とのあまりの違いに驚かされます。
 彼女が入れられた連邦刑務所の人種構成はラテン系50%、アフリカ系40%、残る10%が白人とアジアパーク系。白人は少ない。アメリカの女子刑務所は、レズビアン社会でもある。
 刑務所内には電子レンジが2台あり、朝から晩まで常にフル稼働している。みんな電子レンジで料理をつくっている。食材は売店で買えるもののほか、キッチンから裏ルートで持ち出され、隠れて肉や魚が売り買いされている。ステーキ、バーベキュー、魚のグリル、中華料理など、すべて電子レンジでつくることができる。
 連邦刑務所は組織犯罪がらみの囚人が多い。それは麻薬ビジネスがほとんどだから。組織的な麻薬ビジネスに対する量刑はきわめて重い。殺人や強盗などの暴力系犯罪は、ほとんど州刑務所に入る。だから、州刑務所より連邦刑務所の方が、はるかに所内の雰囲気がまともであり、穏やかだ。
 連邦刑務所の食事は、下手なニューヨークのレストランより、よほど美味しい。朝はパン3枚、ゆで卵2個、コーンフレーク取り放題。飲み物はドリンクバーで、飲み放題。
 昼は、スープバーとサラダバーがある。毎日、一品が日替わり。
 夕食も、ハンバーグやスパゲティなど毎日一品が日替わり。日曜日はローストビーフ。食堂以外でも、電子レンジをつかって美味しいものが食べられる。
 刑務所から外へ電話をかけることもできる。2つの刑務所から同時に外部に電話して、別々の刑務所にいる囚人同士が電話で話すという芸当もありうる。しかし、これは見つかったら処罰される。さらに国際電話もOKだ。1回の通話は15分まで話せる。ただし、有料だし、当局から傍受されている。
 著者は、刑務所のなかで日本語を教え、ピアノも教えていました。芸は身を助けます。
 フワフワした軽い女の子が、アメリカの刑務所のなかで、最後まで希望を失わずに生きのび、こうやって日本に戻って体験記を書いてくれました。これによってアメリカの一面を多くの人に知らせることができたのですから、彼女もしっかり日本人の役に立っています。私はそう思いました。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー