弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月25日

自民党迂回献金システムの闇

著者:東京新聞取材班、出版社:角川書店
 例の橋本元首相が料亭で1億円の小切手を受けとった事件を東京新聞が連載記事で追跡していったのを本にまとめたものです。歯科医にはぜひ読んでもらいたいと思いました。
まるでデタラメな世界ですね。歯科医師会というのは・・・。あまりの腐臭に鼻をつまみたくなりました。
 歯科医師会の会長選挙は、かつての日弁連会長選挙と同じで、代議員による間接選挙です。会長候補は全国141人の代議員を買収してまわるのです。高級スカーフなどの手みやげと10万円から30万円の現金を配って行脚します。このほか、学閥(有力なのが6つあるそうです)の同窓会長には多額のお金が動きます。このような会長選での代議員の買収は今にはじまったことではなく、長らくの慣例になっていました。逮捕された臼田前会長は、代議員の買収資金だけで8000万円つかったそうです。しかも、それは自腹を切ったのではありません。自分が会長をしていた日大歯学部同窓会の資金を横領していたというのです。ひどいものです。呆れてモノが言えません。歯科医師の意識って、そんなに低いのでしょうか。なんだか信じられません・・・。
 歯科医師会は政治連盟(日歯連)をつくって歯科医師に都合のよい政策を実現するため、自民党議員に多額の政治献金をそそぎこみました。たった1人のペーペーの議員にも、役に立つと思ったら1億円以上も貢いだというのですから、半端じゃありません。
 公明党の坂口厚生大臣(当時)にも2000万円を政治献金しようとして、400万円手渡しましたが、8ヶ月後に戻され、事件にはなりませんでした。同じように、橋本元首相の1億円についても立件されず、村岡元官房長官1人が在宅起訴されて終わりました。おかしなことです。トップはいつも安泰なのです。
 日歯連は年間18億円の予算を動かし、自民党の最大のスポンサーになっています。臼田元会長が3000万円を横領しても発覚しないシステムが確立していたのです。驚くべき伏魔殿としか言いようがありません。
 日歯連は自民党へ3年間に15億円も献金していました。いえ、もちろんストレートではありません。国政協という迂回献金システムがあるのです。国政協とは国民政治協会という自民党の政治資金団体です。総務省に登録されています。政策をカネで買うというのを日歯連は文字どおり実践していたのです。自分の会長選も横領したお金で代議員を買収して勝ちとったくらいですから、他人のお金をつかって政策を買収するのに、何のためらいもなかったのでしょう。
 お金を日歯連からもらっていた議員が実名で何人か登場しています。石原伸晃(慎太郎の息子のひとりです)、鴻池祥肇、そして福岡の古賀誠と山崎拓議員です。でも、みんな団体から政治献金をもらって何が悪いの、と開き直っています。
 やはり、政治献金は個人からに限るべきです。企業も団体も政治献金はできないと立法で定める必要があります。ところが、小泉首相は、自民党に迂回献金はないと絶叫しながら、迂回献金を禁止する法改正に反対して、つぶしてしまいました。
 日歯連が毎年、政界にばらまいてきたお金は7億円にもなるそうです。すごいものです。だから、元首相にポンと1億円を献金したりするわけです。全国の歯科医が会費として拠出したのがこうやって自民党に流れていって裏金になっているのです。それが、どれだけ日本の政治をダメにしているのか、歯科医師のみなさんには大いに反省してほしいものだと心の底から思いました。
 その意味で私は、歯科医師会とその政治連盟を相手に裁判し、自動的に日歯連の会費を徴収するのをやめさせた勇気ある歯科医師の方々には大いなる敬意を表明します。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー