弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年9月22日

一枚摺屋

著者:城野 隆、出版社:文芸春秋
 さすが松本清張賞を受賞した小説だけのことはあります。ぐいぐいと読み手を引っぱり、飽かせません。本格的モノ書きを志向する私も、こんなストーリーを新人で書けるんだったら、あきらめるしかないか、そんな絶望感にとらわれてしまうほどです。ところが、新人といっても、奥付をみたら、なんと私と同世代ではありませんか。いや、それなら、もしかして、ひょっとすると、ぼくだって・・・、そんな気が急にしてきました。
 それはともかく、時代は幕末の大坂(当時は、大阪とは書きません)です。読み切り瓦版、いえ、もぐりの瓦版づくりを主人公としています。幕末の大坂には不穏な動きがあります。そして、少し前には大塩平八郎の乱が起こっています。物語はなんと、その大塩平八郎の乱の生き残りがひき起こすのです。時代背景など、読んでいて安定感があるとオビにあります。そのとおりです。江戸の時代小説の書き手がまた1人ふえた気がします。

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