弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年8月31日

対テロリズムの戦略

著者:佐渡龍己、出版社:かや書房
 2004年から2005年まで、1年2ヶ月、イラクのバグダッドに滞在していた経験にもとづく本です。著者は防衛大学校を卒業して陸上自衛隊に入り、在イラク日本大使館に勤務しました。
 著者は対テロリズムの戦争においては、人を殺さない戦争を考えるべきだと、再三再四、強調していますが、軍事には素人の私も、まったく同感です。
 テロリズムは心の戦争であり、勝敗はつかない。民衆はもちろん、敵を殺しすぎることは、テロリズム戦争を泥沼化する結果となる。報復の悪循環を避けるために、テロリストは殺してはならない。
 アメリカ軍はテロリストとイラクの民衆を殺しすぎた。このため、イラク民衆のアメリカ軍に対する憎しみは日ごとに強くなっている。これが、テロリズムをなおさら苛烈にしていく。アメリカ軍は、イラクにおけるテロリズム戦争をおさめることができない状態に陥っている。
 それより、テロリストを逃がしてやることだ。民衆によってテロ戦争に勝利をおさめる。テロリズムは、民衆によってあぶり出すに限る。民衆の心をつかんだものが勝利をおさめる。
 なるほど、なるほど。私も本当にそう思います。
 日本はテロリストの攻撃目標となる可能性がある。テロリストは、弱いところ、宣伝効果のあるところ、政治的に効果の高いところを攻撃する。日本は、この三点を備えている。日本本国、サマワへの自衛隊、在留邦人は、他国に比較して弱い。宣伝効果も高い。
 バグダッドの日本大使館には、自衛隊を退官し、民間の警備会社に所属している4人が派遣されている。平均年齢56歳。
 これは、いわば戦争請負会社のような警備会社ですよね。
 テロリストは尽きない。テロリストとなる原因が克服されない限り、同じ考えをもつ者が生まれる。テロリズムは再生産される。
 アメリカの真似を日本はしてはならないとされています。まったくそのとおりです。心ある人の考えは一致することを知って、私はうれしくなりました。好戦派の自民・民主の若手国会議員には、ぜひ読んでもらいたい本です。

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