弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年8月24日

幻想曲

著者:児玉 博、出版社:日経BP社
 麻布永坂の御殿と呼ばれる孫正義の自宅の地下室には、電子式のゴルフコースがあるそうです。世界の有名な名門ゴルフコースがスクリーン上に再現され、その天候までインプットできる仕掛けです。地下室でゴルフができるなんて・・・。
 ソフトバンクはプロ野球へ参入し、孫は先日の博多山笠で台上がりまでしました。孫は、福岡市内の城南中学を卒業して久留米大学附設高校に入学しているので、福岡とは縁も深い。生家は鳥栖駅に近い無番地。祖母は残飯集めにリヤカーで周辺をまわっていた在日韓国人で、そのリヤカーに孫ものっていたのです・・・。
 「日経ビジネス」誌で連載されていた記事を単行本にしたものですから、重複・くり返しがあります。しかし、それだけに同時進行ドキュメントという雰囲気も味わうことができます。
 設立して1年もたたないアメリカのちっちゃな会社、大学生が始めた会社に115億円も投資し、3年後には5兆円の含み益をもたらしました。成功する確率が90%のものより、50%程度のものに数多く投資する。このような投資スタンスがあったのです。
 しかし、失敗した投資もありました。孫は父親にならってパチンコ店を経営して日銭を稼ごうとしましたが、あえなく撤退。山口でのリゾート開発も失敗しました。経営を全面的にまかせた人物は何年後かに追い出し、10億円とかの大金を支払わされました。
 美しき(麗しき)誤解のうちに、他人の褌で勝負する。
 孫の言葉です。なるほど、と思います。24歳で社長になった孫は、1億円ものお金を財界人の知人に個人保証してもらって調達します。自分には提供できるような担保が何もなくても、1億円が借りられるとは、たいした信用ですね・・・。
 それにしても、孫が重度のB型肝炎にかかり、あと5年の生命と宣告されたことがあったというのには驚きました。にもかかわらず、孫はご存知のように今もピンピンしています。ですから、この本に孫の病気のその後のことが何も書かれていないのには不満が残ります。それにしても、20代の若者が1000億円もの大金をもうけるなんていうのは、まっとうな社会のあり方なのか、大いに疑問です。みなさん、いかがですか?

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー