弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年6月20日

「子どもたちのアフリカ」

著者:石 弘之、出版社:岩波書店
 表紙にアフリカの子どもの素敵な笑顔の写真が載っています。でも、頁をめくると、とても笑顔で読める内容ではありません。心が凍りつくような情景描写が次から次に続きます。私は福岡までの電車のなかで読みはじめたのですが、それまでの眠気が嘘のようにさめて、背筋をピンと伸ばして厳粛な気持ちで読みすすめました。
 次世代を担う子どもたちの今から、アフリカの未来を考える。オビにはこう書かれています。この内容ははるか遠いアフリカの国の話しであって、日本とは関係ないと考えてはいけないと思います。エイズ、少年兵、奴隷、いずれも日本にも決して無関係ではありません。
 アフリカのエイズ患者は2500万人。2003年だけで300万人が新しく感染し、220万人が死亡した。アフリカの成人の7.5%はエイズであり、なかには成人の4割ほどがエイズ感染者という国まである。これによって、アフリカの平均寿命は1975年に47歳だったのが、今では40歳になった。
 栄養不足人口は33%、就学率は42%でしかない。親をエイズで失った孤児が増えている。スワジランドでは、妊婦の4割がエイズ感染者。エイズの母親から生まれた子どものうち、20%は母体内で、15%は母乳を通じて感染する。
 アフリカのエイズ感染の9割近くは無防備な異性間交渉が原因。アメリカや日本のような先進国では抗エイズ薬のおかげでエイズと共存して生活できる。アメリカではエイズによる死亡者は70%も減少した。しかし、アフリカでは、抗エイズ薬の投与を受けているのは70万人にすぎず、残る330万人は放置されている。
 アフリカには処女とセックスするとエイズが治るという迷信が広くある。また、病気は身体の汚れた状態で、清浄な処女とセックスすれば浄化されるという間違った観念があり、迷信をはびこらせる原因にもなっている。
 アフリカの少女は、生後1週間から初潮までに女性性器を切除されている。毎年200万人が切除され、アフリカ大陸の女性の3人に1人くらいの割合になる。女性に被害者意識はあまりなく、むしろ女性の方が熱心な支持者になっている。
 アフリカには少年兵が多い。イラン・イラク戦争のとき、2000人のイラン少年兵が手をつないでホメイニ師を讃える歌をうたいながらイラク国境の地雷原に突きすすんでいった。あちこちで地雷が爆発して子どもたちが死んでいったあとを正規軍が進んでいった。生き残った少年兵は1割しかいなかった。子どもは頭が空っぽで、つねに命令に従うから司令官が好んでつかう。戦闘の前にはハッシッシやアヘンなどを与えるし、万一つかまったときのために青酸カリのカプセルも与えてある。
 子どもは奴隷としてもつかわれている。たとえばチョコレート。子ども奴隷のおかげで人件費が安上がりになっている。
 世界には、考えなければいけないことがこんなに多いのか、思わず襟をただしてしまう厳粛な内容です。いかにも厳しい現実ですが、決して目を逸らしてはいけないと思い、最後まで読みとおしました。

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