弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年5月13日

ネアンデルタール人の正体

著者:赤澤 威、出版社:朝日新聞社
 「彼らの悩みに迫る」というサブ・タイトルがついています。その生活だけでなく、思考にまで迫ってみようという意欲的な本です。そのあらわれのひとつが、復元写真と図解です。石器をつくり、火を燃やし、動物を家族で解体し、骨髄をしゃぶっているカラー口絵が紹介されています。
 毛皮を口にくわえ、歯でなめしていた状況や、死者を埋葬するとき、花をとって投げ入れていた様子も描かれています。あっと驚いたのは、ネアンデルタール人に背広を着せると、もちろんヒゲもそっていますが、まるで現代人と同じ格好になるということです。
 しかし、ネアンデルタール人はわれわれ現代人の祖先ではありません。ネアンデルタール人はヨーロッパ周辺の寒冷地にいてアジアには住んでいませんでしたが、絶滅してしまいました。クロマニヨン人との混血説は否定されています。
 人類がアフリカ起源であることはよく知られています。しかし、アフリカ起源は600万年前と20万年前と、2回あったそうです。改めて認識しました。いずれにせよ、現代人がアフリカ人を共通の祖先とすることは間違いない事実なのです。白人だから優秀だとか、黄色人種だから偉いとかいっても、何の根拠もないことがよく分かります。
 縄文時代の日本の人口は20万人くらいだったことが紹介されています。へー、そんなに少なかったのか、と驚いてしまいました。
 化石骨の分析から、何を食べていたのかまで分かる。そんな指摘があるのにもビックリです。タンパク質コラーゲンの同位体を分析すると、タンパク質がどのような植物に由来するか復元できるというのです。ネアンデルタール人は食肉中心の食生活であり、クロマニヨン人は動物の肉だけでなく、淡水魚も食べていました。
 ネアンデルタール人は、数万年間、毎日毎日同じことを繰り返していたと推定されています。現代人の私たちからすると、何の変化もなく、退屈でおもしろくない生活だったことでしょう。そこにどんな悩みがあったか、こたえはもちろん出ていません。

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