弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月20日

悪魔のマーケティング

著者:ASH、出版社:日経BP社
 タバコを吸うと、ひとは快感を得る。ただし、30分程度しか快感は続かない。30分過ぎると、ニコチン切れの状態に陥り、イライラするなど不愉快な禁断症状が出てきて、タバコが吸いたくてたまらなくなる。ニコチン依存症だ。喫煙者の大半は本人の意思ではなく、ニコチン依存症のせいで、タバコを吸わされている。ニコチンは脳のドーパミン系に作用して、ヘロインやコカインなどの麻薬と似た働きをする。
 紙巻タバコには、ニコチンの体内吸収を促進する添加物が含まれている。紙巻タバコは、ニコチンを注入する注射器なのだ。タバコの煙には、4000以上の化学物質が含まれている。その多くは、発癌性物質であり、変異原性物質であり、有害なもの。タバコを原因として死亡する人は日本で年に9万5000人と厚労省は推定している(1995年)。
 24歳をすぎてタバコを吸いはじめるのは5%以下。だからタバコ産業のターゲットは18歳。18歳でタバコを吸いはじめると、その銘柄を忠実に吸い続け、年をとっても銘柄を変えることはない。もし、ヤングアダルト・スモーカーがタバコを吸い続けなければ、タバコ産業は衰退していく。
 紙巻タバコからニコチンを全部とり除くことは実は可能。しかし、ニコチンが少なすぎると、人気を失ってしまう。ニコチン中毒者が生まれないとタバコ産業もなりたたない。低タールタバコは、喫煙者が禁煙するのを遅らせたり、断念させたりするための戦略の一部である。
 女性は男性に比べると、タバコによる健康影響が出やすい。乳癌で亡くなった女性は1万人足らず。子宮癌は5千人ほど。ところが、肺癌は1万5千人もいる。女性はホルモンや体格のうえで、タバコ依存症にもなりやすい。タバコはダイエットに良いどころか、逆に美容の大敵。肌荒れ、しみ、歯と歯茎の病気、しわが増加する。ところが、第三世界で女性の喫煙率は急スピードで上昇している。
 タバコを吸うのが経済発展の象徴であるかのような幻想が第三世界に広がっている。世界で生産される7%のタバコが輸出にまわされ、そのうち3%が密輸されている。
 もちろん、俺たちはそんなもの(shit)は吸わない。ただ売るだけ。タバコを吸う権利なんざ、ガキや貧乏人、黒人そのほかのおバカな方々に謹んでさしあげる。
 こんなに馬鹿にされて、それでもあなたはタバコを吸い続けますか・・・?

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