弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月19日

東大で教えた社会人学

著者:草間俊介、出版社:文芸春秋
 私と同じ団塊の世代が東大工学部で学生に対して、知っておくべき社会の「暗黙知」を教えた授業が本になっています。うんうん、なるほど、そうだよな。つい我れ知らず頭を上下にふりふりさせながら面白く読みました。
 日本の土地神話は銀行の担保主義に支えられてきた。土地の資産価値は下がらない。つまり、地価は上がり続けるという幻想があったから、銀行は土地を担保に取ってきた。そして、銀行が担保にとるから土地の値段がついてきた。しかし、その銀行も今では、その土地がどれだけ収益を生むのかという評価に変わってきている。これからは収益の上がらない土地の地価上昇はないと考えるべきだ。
 対米追従は従来型システムの典型。自国の正義を声高に主張するアメリカには自分の醜さが見えていない。それがアメリカの浅はかさであり、恐ろしさだ。そんなアメリカに依存して生きなければいけない日本は危うい。
 日本の政治家や官僚には、アメリカを怒らせたくないという恐怖心が根底にある。アメリカが守ってくれるという対米従属の体質が骨の髄まで染みついている。アメリカから文句を言われると、「はい、そうですか」とすぐに言うことを聞いてしまう。こんな思考停止状態を続けていたら、日本はいつまでも国家ビジョンをもちえない。
 日本の製造業が強くなったのは、人材の有能さだけでなく、しっかりした人材育成をしていたから。誰にでも潜在能力がある。これは、トレーニングによる日々の鍛錬と本人のやる気のうえに、チャンスが重なって初めて発現する。開拓せずに放っておくと潜在能力はいつのまにか消失してしまう。だから、フリーターが潜在能力を開花させるのは至難の技だ。どこの会社でも、給与は自分の稼いだ額の3分の1しかもらえないもの。つまり、会社としては給料の3倍は働いてもらわないと人件費がペイできない。立派な戦力として評価されるには5倍は働かないといけないものだ。
 トップと同じような考え方をする人間ばかりの会社は居心地がいいかもしれないが、周囲の状況変化への対応力は極端に低い。変化の激しい今の時代で生き残るには、同じような考え方の人ばかりではダメ。
 30年前、「会社の命は永遠。その永遠のために奉仕すべき」という遺書をのこして自殺した大商社の常務がいた。しかし、会社は決して永遠ではない。昔からそうなのだ。会社に殉ずる人生など、自己満足にすぎない。まず個人として独立した考えと価値観をもつ。会社の論理や都合なんて、その次でいい。
 年齢(とし)をとると判断が早くなる。これは頭のなかでパターン認識ができるということ。だけど、パターン認識だけで仕事をしていると、いつのまにか思考の柔軟性がなくなってしまう。新しいことを経験しないと頭が固くなる。
 人は能動的に頭をつかって何かアクションをしようとする思考回路ができる。受け身のときにはできない。この思考回路を何度もつかっていると、脳内で前より200倍も早く信号が流れ、超高速で思考できるようになる。一度この思考回路ができると、別のことを思考するときにも超高速でできるようになる。
 うーん、いろいろ勉強になりました。大学時代というのは生涯の友人をつくるのに最適の時期だという指摘がなされています。私も4年間も学生セツルメントにうちこんで生涯の友人を得ることができ、人生の宝だと今も瞳のように大切にしています。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー