弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月11日

洗脳選挙

著者:三浦博史、出版社:光文社ペーパーバックス
 イメージ選挙を演出して何度も勝った実績を誇る選挙プランナーによる選挙必勝のマニュアル本です。選挙の裏側って、こんなことにもお金が動くのかと思うと嫌になりますが、事実から目をそむけるわけにもいきません。
 選んだつもりが、選ばされていた。サブ・タイトルにあるとおり、徹底して候補者について虚像のイメージを有権者に売りこみ、投票に駆りたてます。その手の内を知れば知るほど、有権者はもっと賢くならなければいけないんだな・・・と、つくづく思います。
 人の印象は目からの情報によってほとんど決まってしまう。人の印象を決めるのは、服装や身体の動きといった目からの情報が55%、声の調子や話し方が38%、話の中身が7%である。要するに、演説内容よりも外見が大切なのだ。だから、候補者には歩き方まで直してもらう必要がある。候補者は自分の十八番の演説をすればいい。街頭演説は、とにかく十八番を絶対に歌い続けること。演説の中身は関係ない。
 マニフェスト(政策)パンフは売れなくてもよい。売る姿勢が大切。
 選挙用ポスターの写真を選ぶときには候補者の要望は無視する。カメラマンも、いきなりポーズをとらせるようなのはダメ。はじめに30分ほど候補者と雑談し、候補者のいろいろな顔を客観的に見て、自然な顔を頭に焼きつける。そのイメージした笑顔がとれるようにシャッターを押す。これが本物のプロだ。
 選挙カーは、いつものウグイス嬢にまかせるより、男、つまりカラスボーイの素人っぽい熱意でやる方が今では受ける。
 選挙では、普段やっていないことは絶対にやってはいけない。奇をてらったパフォーマンスは、一時的に話題になっても、全体としては候補者にとってマイナスでしかない。
 アメリカの大統領選挙の投票日の3日前にビンラディンのテープが全米でテレビ放映されました。このビデオは、事前に押収していたテープを使ったブッシュ陣営の「最終兵器」だと著者は解説しています。ビンラディン・サプライズの効果でブッシュは大統領選挙に勝てたというわけです。これが本当なら、誤った世論操作もいいとこですよね。それでも、権力には「寛大な」アメリカでは、ほとんど問題になっていません。アメリカ国民は、それほどみな飼い慣らされてしまったのでしょうか・・・。
 それにしても、選挙プランナーがこんなにも活躍できるなんて、馬鹿げています。日本の有権者はもっと目を覚ます必要がある、しみじみそう思ったことです。

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