弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月 8日

ストレスとうつ

著者:徳永雄一郎、出版社:西日本新聞社
 日本人の自殺者は1978年から1997年までは年間2万人から2万5000人でした。ところが、1998年から年間3万人台になって、今日に至っています。男女比では男が72.5%。50代が25%、40代が16%、30代が13%です。働き盛りの男性の自殺が増えているのです。たしかに、弁護士である私も自殺のケースを扱うことがしばしばです。
 うつ病は人口の5%、軽いうつ状態の人は15%いるとみられています。年間35万人がうつ病によって退職し、軽いうつ状態を含めると105万人が退職していると想像されます。現在の高校中退者は8万2000人。高校生の5%がうつ状態に陥っているとすると、4200人がうつ状態で退学している可能性があります。
 著者は、うつ病を病気ととらえず、1人の人間の生き方が壁にぶつかったと考えて診察していると言います。有明海に面した「海の病棟」というストレス専門の病棟をもうけているのが全国的にも有名です。 私も見学したことがありますが、精神科の閉鎖病棟とはまったく違って、明るいホテルのような病棟でした。有明海の潮の満ち引きを窓からゆったり眺めることによって、自然の変化するリズムをじっくり身体で感じることができるのです。朝、のぼってきた太陽の光を全身に浴びて、自分が地球の生き物のひとつであることを実感することができます。そのことによって、それまで自分こそ社会の中心だと思って張りつめていた気持ちがふっと解き放たれていくのです。
 実は著者は、私の中学校のときのクラスメートなのです。おだやかな人柄です。うちの人間ドッグに入りに来いよ。頭のなかまで診てあげるから、と親切な言葉をかけられました。とんでもない。身震いして、ありがたくお断りしました。脳の異常がついに発見された、なんてなりたくありませんからね・・・。あなただったら、どうしますか。診てもらいますか。入りたいなら、紹介しますよ・・・。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー