弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月15日

名主文書にみる江戸時代の農村の暮らし

著者:成松佐恵子、出版社:雄山閣
 福島県にあった二本松藩。そこで長く名主だった安斎家に残されていた人別帳をもとにして、江戸時代の中後期の農村の実情を探った本です。日本人は本当に昔から記録を残すのが大好きだったんですよね。モノカキを自称する私は、ついうれしくなってしまいます。
 人別帳には、氏名、年齢、続柄などのほか、出生・死亡・縁組など、ことこまかに記入されています。だから、7割が嫁入婚、残る3割が婿入り婚。4人に1人は最初の結婚を離別で終えていて、3分の2の夫が再婚している。これは女性(妻)についても同様で、離婚率はきわめて高かった。こんな事実が分かります。
 名主(なぬし)は、必ずしも世襲ではなく、一般の百姓からの新規取立も3割をこえていた。不正があればもちろんのこと、状況に的確に対応できない名主も罷免されることがあった。
 当時の平均寿命は、男子が38.8歳、女子が35.7歳で、今とちがって男子が少し高かった。明治20年代になって、ようやく平均寿命は44歳台になった。ところが、江戸時代にも65歳以上の人はかなりいた。この村では、最高時13%だった。2003年度の日本の全国平均が19%だから、決してひけをとらない数字だ。
 人口減をくい止める対策として、二本松藩は、赤子養育手当を取り入れた。第3子に金2分、第4子に金3分、第5子以上には金1両が与えられた。この資金は藩からの拠出金のほか、豪農豪商からの献金による。金融業をしている人物が1人でポンと1000両を拠出するということもあった。ものすごい金額です。
 村ではバクチやケンカが多くて、その取締りに苦労していた。なんてことも分かりました。日本人が競馬やパチンコを好きなのは昔からの習性なんですね、きっと・・・。

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