弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年2月18日

松下政経塾とは何か

著者:出井康博、出版社:新潮新書
 松下幸之助が自民党に変わる新党結成を夢見て70億円を投資してつくった「現代の松下村塾」は、一見すると華々しい成果をあげているように見える。なにしろ200人をこす卒塾生のなかから、29人の国会議員、26人の地方議会議員、5人の首長を輩出しているのだから・・・。しかし、彼らは本当に日本のために役に立つ政治家と言えるのだろうか・・・。私はかなり疑問を感じている。街頭でラグビーのユニフォームを着たり、自転車で走ったりのパフォーマンスで、どうやったらテレビの話題づくりがうまくいくのか、そればっかりなのではないか。果たして、国民の生活の実態をふまえて日本の政治がどうあるべきかを真剣に議論しているのか。「負け組」を自己責任だとして突き放した議論をしていないのか。
 松下幸之助は、欲望は力であり、人間の活力だと考えると高言していた。同時に、欲望は力だから、悪にも善にもなるとも言った。
 現実に、政界のなかでの塾出身者の評判はいいどころか、悪い。政治家として何をするかではなく、政治家になること自体が目的となっている。塾出身者は人をだますことはできても、人の心までつかむことはできない。政経塾は、権力を持たない者が成り上がるための装置にすぎない。
 塾生の研修資金は1年目で月に20万円、2年目からは月25万円。加えて年間100〜150万円の活動資金が支給される。寮費は月4500円でしかない。
 塾出身者が民主党に多いのは、自民党から出たくても、すでに選挙区が埋まっているから。小選挙区で自民党候補の空きが出ても、公認されるのは2世か関係者のみで、前職と縁のない新人が出馬できる可能性は限りなく低い。だから、官僚出身者も民主党へ流れている。自民党も民主党もベースに違いはないからだ。
 高校のときの同級生が、いま県知事をしています。大学生のときに同じクラスにいた人物が自民党の代議士になっています。どちらも政界を渡り歩いてきました。ブームに乗って、新自由クラブとか新党なんとかです。当選しなければタダの人とは言うものの、国民不在、政策なしにただ権力と金力を握りたいという自己の欲望のみを優先させて考えているようで、2人とも私はどうにも好きになれません。

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