弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年2月18日

金貸しの日本史

著者:水上宏明、出版社:新潮新書
 金貸しと売春は人類最古の職業だとよく言われます。弁護士生活を30年もしている私も、そうだろうなと思います。日頃の法律相談でもっとも多いのが金銭貸借と男女間のトラブルだからです。
 大化の改新(645年。もっとも史実ではないという学者の意見もあります)ころの出挙(すいこ)が歴史に登場する金貸しのはじめのようです。平安京をはじめた桓武天皇は、平城京にある寺院が金貸しで利子をむさぼりとっていると怒ったそうです。はじめて知りました。世界史としては、紀元前3000年のメソポタミヤ文明で、ハンムラビ法典の麦貸し付けが初めてだそうです。年利33%。銀貨の貸し付けだったら上限が20%でした。
 借金の問題は、貸し手をなくせばいいという簡単な問題ではありません。
 クレサラ被害をなくすことに取り組んでいる運動団体は何年も前から「高利貸しのない社会をめざす」というスローガンを掲げていますが、私には違和感があります。明らかに不可能なことを運動の目標としてよいとはとても思えないからです。銀行や政府系金融機関は高利貸しではないとでも言うのでしょうか。また、クレジット・カードを、今の日本からなくせるというのでしょうか。
 もちろん、暴利を取り締まることは私も必要と考えています。しかし、貸し手の対策とあわせて、借り主側のカウンセリングの充実をはからないと問題の根本的な解決はありえないと私は確信しています。
 ところで、明治10年にできた利息制限法(今の利息制限法は昭和29年に制定。民法制定は明治23年)でも、最高利率が年2割だったのを知りました。

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