弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年11月15日

うそつき病がはびこるアメリカ

著者:デービッド・カラハン、出版社:NHK出版
 ニューヨーク信用組合は創立80年、組合員の多くは消防士や警察官。9.11のあと、ATMが監視されず、いくらでも現金が出せる期間が1ヶ月ほども続いた。4000人もの組合員が自分の預金以上のものを引き出した。組合が手紙を出して返還を求めたが応じない組合員は多く、結局、1500万ドルが戻らなかった。そこで、ついに警察が捜査して大量の逮捕者が出た。
 一流の法律事務所に入るには、大学時代の成績が優秀で、LSATで高得点を得て、膨大な学生ローン(平均8万ドル)をかかえこむ覚悟が必要だ。新人弁護士の給与は年俸12万5千ドル。契約金は4万ドル。しかし、大変な特権と同時に過酷な体験をさせられ、信じられないほどのストレスにさらされる。週80時間は働かされる。そして、いつの日かパートナーになれる可能性は今やゼロに等しい。
 90年代、アメリカの弁護士の辞典に「スカッデノミクス」という新語が登場した。ファッスク代や長距離電話代などの基本的な事務費を、五つ星ホテル並みの法外なレートでクライアントに請求する慣行のこと。
 年間2200時間とか2400時間労働があたりまえというノルマを達成できる弁護士はほとんどいない。せいぜい1700時間から1800時間だ。しかし、それでは上司に叱られる。そこで、弁護士の仕事で今もっともはやっている分野のひとつが、他の弁護士の請求書を調べて水増し請求をくいとめようというもの。
 アメリカでは、大学を出ていない人の初任給は14%も減少した。労働者全体の4分の1にあたる3000万人の労働者が年収1万9000ドル以下。
 アメリカは、いまゲーテッド・コミュニティが5万をこえ、700世帯が住む。70年代初めには全米に2000しかなかった。そこは、周囲を門とフェンスで囲って住民と訪問者以外は入れないようにしたところ。カリフォルニア州では、新築住宅の40%がゲーテッド・コミュニティ内に建てられている。
 IRS(内国歳入庁)が脱税に甘くなって高額納税者は間違いなく得をした。1988年以来、低額納税者に対する調査率は3割も増えているのに、高額納税者に対しては90%も減少した。彼らは税金専門の弁護士や会計士を雇って抵抗するので、低額納税者の方が扱いやすいからだ。
 現代アメリカの真実の姿を知ることができる本だと思いました。

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