弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年8月 1日

山がくれた百のよろこび

出版社:山と渓谷社
 私は月に1回、近くの小山にのぼることにしています。高さ400メートルもありませんが、戦国時代は頂上付近が山城になっていました。自宅から頂上まで歩いて1時間。広々とした頂上でお弁当を開きます。梅干し入りのおにぎりを爽やかな風に吹かれながら食べるのは格別です。もちろん、その前に上半身も裸になってタオルで汗をぬぐってさっぱりします。お腹がくちくなったら、少しベンチで横になって休みます。頭上をゆったり白い雲が流れていきます。至福のひとときです。
  私は、高い山にのぼったことはありません。フランスのシャモニーに行ったとき、ケーブルカーに乗って高い峰にのぼったことがあります。頂上に着いたとき、周囲を見まわすと、なんと日本人観光客が、わんさかだったことを今も鮮明に覚えています。
  この本は本格派の登山家を中心として、有名な登山家137人が山登りの魅力を語ったものです。不破哲三から徳仁親王までいます。不破哲三は日本共産党の議長ですし、私の尊敬する人ですから、すぐ分かりました。でも、徳仁親王とは一体だれだろうとおもってしまいました。あとの説明を読んで、奥さんが雅子とあったので、ああ、いま話題の天皇の息子かと思いあたりました。可哀想に、いわば単なる肩書きしかなく、普通の名前はないのですね・・・。山野上(やまのうえ)一太郎(いちたろう)というような名前がないと、フツーの人間じゃないよね。そう思いました。それはともかくとして、これまでの登山回数150回以上というのですから、私はとても及びません。天皇一家も、案外、フツーの人間の生活をしているんだなと思いました。
  ひとつの成功を機に堕落していく人を、これまで幾度も見てきた。人間やれば何でもできる。過去の自己にしがみついているうちに時はどんどん流れていく。
  山に入ると、心の棘がぽろっと落ちた、と感じる瞬間がある。
  山が好きな人たちの言葉があふれている本です。私も汗びっしょりになりながら苦労して山にのぼっているとき、どうしてこんな苦労しているのだろうと、いつも不思議におもうことがあります。でも、頂上にたって、見晴らしのいいところで爽やかな風に吹かれると、ああ、山にのぼるっていいな、いつもそう思うのです。

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