弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年5月 1日

松島市兵衛風流帖

著者:大野靖子、出版社:講談社
 オビに「犯罪都市江戸捕物情話」とあるのは逆効果だと思いました。江戸が「犯罪都市」だなんて、本当でしょうか。むしろ、江戸の治安はとても良かったのではありませんか。「犯罪都市」なんていうと、現代アメリカのワシントンやロサンゼルスの物騒な状況をすぐ連想させます。もちろん、江戸に犯罪がなかったなんてことは私も言いません。奉行所があり、八丁堀同心が活躍していたことは事実です。
 それはともかく、テレビの脚本家として名高い(ようです。私はテレビを見ませんので、その評価はできませんが・・・)著者の江戸人情話とストーリーの巧みさには舌を巻きます。ともかく、ぐいぐいと話の世界に引きずりこまれます。うーん、とうなるほど、主人公と登場人物の性格描写が見事です。生き生きと目の前を飛びはねるように動いていく様は、手をうって感心してしまいます。
 江戸人情話と言えば山本周五郎ですが、それとはまたひと味ちがって、推理小説風の楽しさも味わうことができるのです。

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