弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年4月 1日

まちづくり権

著者:寺井一弘、出版社:花伝社
 日田市に別府市の主催する公営競輪の場外車券売り場をつくるという。とんでもない。日田市が市長を先頭に反対運動に立ちあがった。でも、国が設置を許可した。さあ、どうする。国を相手に設置許可の取り消しを求める行政訴訟を起こすしかない。そこで、日田市出身の筑紫哲也の推薦で東京で活動する長崎出身の著者が登場した。
 著者の行きつけの日田の寿司屋は「弥助すし」。その長女が福岡の三隅珠代弁護士。私は残念ながら、「弥助すし」にはまだ行ったことがない。
 「まちづくり権」を提唱して果敢に挑んだものの、裁判所は見事に肩すかしを喰らわせる。だいたい裁判長は、ついこのあいだまで国(行政)の代理人をやっていたような人物なので、コチコチの頭しかない。高裁でも一回結審だと言われてしまう。そこを著者は持ち前の粘り強さで2回目の裁判をなんと4ヶ月先にすることに成功した。幸いにも別府市長が交代して合意が成立し、裁判自体は取り下げで終了。その成果がこの本になった。この裁判については、別に『まちづくり権への挑戦』(信山社)という本が出ている。こちらは九大のゼミ生たちがまとめたもの。

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